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北方領土の不都合な真実

北方領土

GW中にこんな記事があった。妻に言わせると「北方領土は日本のものでしょ、見えてるし」、ということで多くの日本人はそう思うし、ソ連(ロシア)はどさくさに紛れて日本の固有領土を掠め取った卑劣な国、というのが日本の常識だ。外務省HPにもこう記されている。
1855年2月7日,日本とロシアとの間で「日魯通好条約」が調印され択捉島とウルップ島の間に国境が確認されました。それ以降も,択捉島,国後島,色丹島及び歯舞群島からなる北方四島は,一度も他国の領土となったことがない,日本固有の領土です。しかし,1945年に北方四島がソ連に占領されて以降,今日に至るまでソ連・ロシアによる不法占拠が続いています。

内閣府もHPに北方領土問題について丁寧な資料を用意しており、「返還要求の根拠」として、(1)歴史的事実と(2)国際法上の根拠を揚げて説明している。歴史的事実に関しては日本固有の領土であったことに議論の余地はない。「返還要求の根拠」としてこう記されている。
(2) 国際法上の根拠
1.連合国は、第二次大戦の処理方針として領土不拡大の原則を度々宣言しており、ポツダム宣言にもこの原則は引き継がれている。この原則に照らすならば、我が国固有の領土である北方領土の放棄を求められる筋合いはなく、またそのような法的効果を持つ国際的取決めも存在しない。
2.サン・フランシスコ平和条約で我が国は、千島列島に対する領土権を放棄しているが、我が国固有の領土である北方領土はこの千島列島には含まれていない。このことについては、樺太千島交換条約の用語例があるばかりでなく、米国政府も公式に明らかにしている(1956年9月7日付け対日覚書)。


さりげなく書かれているが、問題は(2)の2。サン・フランシスコ平和条約(1951)は連合軍側と日本の戦後協定で、ソ連は条約に署名してない。部外者。だからそこに何と書かれていようとソ連にとっては無関係。根拠にはならない。二国間で合意すれば、固有領土であるか否かは問題ではないはずだ。内閣府が本条約にソ連が署名していないことを記載しないのは、故意の印象操作と思われる。

ソ連と日本の間の合意は1956年の「日ソ共同宣言」である。これにより、日ソ間の外交関係が回復した。交渉の経緯はWikiに詳しいが割愛、最終的に四島返還を盛り込むことはできず、歯舞、色丹の二島返還だけが日本に引き渡されることで合意した。ポイント部分の公式日本語訳がこちら(肩書加筆)。

9 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

10 この共同宣言は、批准されなければならない。この共同宣言は、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかに東京で行われなければならない。

以上の証拠として、下名の全権委員は、この共同宣言に署名した。1956年10月19日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書2通を作成した。

日本国政府の委任により
(内閣総理大臣) 鳩山一郎
(農林大臣)    河野一郎
(衆議院議員)   松本俊一


両国は1956年12月7日、日ソ共同宣言の批准書を交換し、日ソ共同宣言は同日発効した。批准とは、既に全権代表によって署名がなされた条約に拘束されることを国家が最終的に決定する手続きである。批准された以上法的に正しい。これを読む限り、国後、択捉は日本固有の領土であることも、不法に占拠されたことも全く関係なく、日本とソ連は二島返還で合意している。平和条約が締結された暁には二島が粛々と返還されるだけだ。日本から見てもロシアから見ても北方領土問題は存在しない。

法治国家であるなら法は遵守すべきだろう。鳩山一郎が批准してしまったで取り返しがつかないが、その後のいくつかの首脳会議があり声明や宣言が出されているものの実質はなく、日本国民向けの形づくりと言うのが多分実態。今回も多分同じ。ロシアにとっての領土問題とは二島返還を実現することだろう。外務省や内閣府の「ソ連・ロシアによる不法占拠が続いています。」という言い方は、北朝鮮もあきれる無法国家の態度のように思われる。どこか認識に間違いがあるのだろうか。
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