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2020.05/16 [Sat]
新型コロナウイルス:悲喜劇の構造(1)
昨日の新聞の広告でこんな本が紹介されていた。見たことあるよな、と思って本棚を覗くと2007年の本で、5月第一刷、12月に購入していた。累計85万部も売れているらしい。執筆者は当然ながら、編集者も喜ばしいかぎりだろう。広告の左下にこんなセールスコピーが載っていた。「終わりなき感染症時代の不安のなかで、真に求められるのは、英知や理性に支えられた“思想”である。」 いいじゃない、と思ったので記憶に残った。
日経新聞朝刊より
“思想”かどうかは別にして、「真に求められるのは、英知や理性に支えられた情報と認識」であるのは確か。それなくして、有効な判断をすることは不可能である。
ブログ内検索をしてみると、コロナの文字の入った記事は2月15日のクルーズ船の旅に対する記事を皮切りに44件あった。内30数件は新型コロナウイルスの感染そのものに関する記事である。これらは、すべて新聞テレビの報道とは視点の違う記事ばかり、まさに「真に求められるのは、英知や理性に支えられた情報と認識」を意識して書いてきた。記事中に新聞、テレビに対する罵詈雑言が散見されるのは、それと真逆の精神があまりに透けてみえたから。
感染拡大の収束が明らかになり、緊急事態宣言も解除されてきたので、一度総括しておく。題して「悲喜劇の構造」。実態に比し、百兆円規模の経済的損失と社会的損失を過剰に被ったと思われるからである。それらについてはこれまで個々に具体的に記してきたので詳細は書かない。
まず、新型コロナウイルスの感染発生、拡大という実態がある。それが国民に不安を生起せしめた。その対策として感染拡大を防止するため政府が各種規制もしくは自粛要請を出し莫大な消費が雲散霧消、経済、社会が委縮したというのが大まかな流れである。見かけ上はその通りで、このレベルの理解で良ければ問題はない。
まず実態の把握と認識。政府の情報公開、新聞、テレビ、日々の感染者数や個々の出来事を山のように流すが、コロナ感染の実態の時間的空間的全体像を報道するケースは極めて少なかった。まさに英知や理性の欠片もない状態。よって、この項に関してどのHPよりも正確に記してきた、どこにもなかったから。
NHKの数字では今日16日午前10時半時点の新型コロナウイルスの感染の死亡者は729人である。では、死亡者数の推移がどのようになっていて、死亡したのはどのような人(年齢別、既往症等)なのか?日本における感染の実態を認識する上で重要な情報であるが、現在は厚生労働省を含め新聞テレビでも報道されない。
しかし、感染当初に高齢者の死亡が多いとか、死亡者の多くは合併症のある患者、という報道があった。現在唯一公開されている年齢別死亡者の情報がNHKのHPにある。しかし資料は4月19日付け、まず現在はどうなのか???

ネット上で二つ情報があった。一つがNHKのニュース。5月1日のもの。少なくとも東京の死亡者の年齢別の傾向は変わらない。
東京都は新型コロナウイルスに感染して死亡した人の年代別の内訳を公表し、60代以上が全体のおよそ9割を占めていることを明らかにしました。それによりますと、
▽30代以下と100歳以上で死亡した人はいなかった一方、
▽40代が1人、
▽50代が9人、
▽60代が18人、
▽70代が40人、
▽80代が38人、
▽90代で16人となっています。
もう一つが、防衛大臣河野太郎氏の5月9日付けのHP。「新型コロナウイルスを年齢別に見る」というもので防衛大臣というのが可笑しい。いかに厚生労働省が情報を公開していないか、そして見るに見かねて、ということかと思う。(厚労省資料5月7日)とあり、数字が並ぶだけなので下図に図化。


5月6日というから10日ほど前のデータである。この時点で感染者数は15000人、死亡者数は387人、ちょっと少ない気がするがとりあえず検証もせずそのまま採用。まず、陽性者の年齢分布、これはあちこちで公開されているが、20代から50代がモードを形成している。それらに次いでセミ現役の60代、60代以下の比率は8割。人口分布に近い気がするが、20歳未満が少ないという特徴も顕著である。
続いて防衛省経由でリークされた貴重な最新の死亡者数の年齢階級別死亡者分布。死亡者が高齢者に偏っていることが歴然、70歳以上で死亡者の8割以上を占める。先に述べた東京の統計と異なるが、5月6日時点の70歳未満の死亡者の実数は66人であった。残念ながらこれらの死亡者の感染前の状況はわからない。しかし、以前の合併症患者の割合が高いという情報、病院でのクラスター発生が多発していると実態、糖尿病患者とコロナウイルスの相性などから、健康な人が感染して死亡するケースはかなり稀ではないかと推測する。推測せねばならないという、先進国としての情報公開の実情が情けない。
多少横道に逸れた部分もあるが、ここから感染実態について重要な帰結を得られる。すなわち、感染しても70歳未満であれば死亡率は全体の死亡率の五分の一に過ぎず、1000人の死亡者になっても200人程度となる。この数は今までブログに書いたインフルエンザや結核、交通事故、そして自殺者に較べてはるかに少ない。
これが実態の認識ということである。実態を公開すると「外出自粛」の気が緩むからという政治判断なのか、それに与する新聞テレビの姿勢なのか、または単なる行政と各メディアの担当者の能力レベルの問題なのか。いずれにせよ、国民に実態は知らされておらず、現状は英知や理性とかけ離れた情報と報道ばかり。
もし前者だとすれば、国民に実態を知らせないという意味で、検閲がないにもかかわらず戦時中の大本営発表を垂れ流した新聞と全く同じ。そこにテレビという強力な媒体が加わっているから始末が悪い。世論とか国民の声とか新聞は書くが、要は新聞テレビが自己の洗脳結果に自己満足している図に過ぎない。
(続く)
日経新聞朝刊より

“思想”かどうかは別にして、「真に求められるのは、英知や理性に支えられた情報と認識」であるのは確か。それなくして、有効な判断をすることは不可能である。
ブログ内検索をしてみると、コロナの文字の入った記事は2月15日のクルーズ船の旅に対する記事を皮切りに44件あった。内30数件は新型コロナウイルスの感染そのものに関する記事である。これらは、すべて新聞テレビの報道とは視点の違う記事ばかり、まさに「真に求められるのは、英知や理性に支えられた情報と認識」を意識して書いてきた。記事中に新聞、テレビに対する罵詈雑言が散見されるのは、それと真逆の精神があまりに透けてみえたから。
感染拡大の収束が明らかになり、緊急事態宣言も解除されてきたので、一度総括しておく。題して「悲喜劇の構造」。実態に比し、百兆円規模の経済的損失と社会的損失を過剰に被ったと思われるからである。それらについてはこれまで個々に具体的に記してきたので詳細は書かない。
まず、新型コロナウイルスの感染発生、拡大という実態がある。それが国民に不安を生起せしめた。その対策として感染拡大を防止するため政府が各種規制もしくは自粛要請を出し莫大な消費が雲散霧消、経済、社会が委縮したというのが大まかな流れである。見かけ上はその通りで、このレベルの理解で良ければ問題はない。
まず実態の把握と認識。政府の情報公開、新聞、テレビ、日々の感染者数や個々の出来事を山のように流すが、コロナ感染の実態の時間的空間的全体像を報道するケースは極めて少なかった。まさに英知や理性の欠片もない状態。よって、この項に関してどのHPよりも正確に記してきた、どこにもなかったから。
NHKの数字では今日16日午前10時半時点の新型コロナウイルスの感染の死亡者は729人である。では、死亡者数の推移がどのようになっていて、死亡したのはどのような人(年齢別、既往症等)なのか?日本における感染の実態を認識する上で重要な情報であるが、現在は厚生労働省を含め新聞テレビでも報道されない。
しかし、感染当初に高齢者の死亡が多いとか、死亡者の多くは合併症のある患者、という報道があった。現在唯一公開されている年齢別死亡者の情報がNHKのHPにある。しかし資料は4月19日付け、まず現在はどうなのか???

ネット上で二つ情報があった。一つがNHKのニュース。5月1日のもの。少なくとも東京の死亡者の年齢別の傾向は変わらない。
東京都は新型コロナウイルスに感染して死亡した人の年代別の内訳を公表し、60代以上が全体のおよそ9割を占めていることを明らかにしました。それによりますと、
▽30代以下と100歳以上で死亡した人はいなかった一方、
▽40代が1人、
▽50代が9人、
▽60代が18人、
▽70代が40人、
▽80代が38人、
▽90代で16人となっています。
もう一つが、防衛大臣河野太郎氏の5月9日付けのHP。「新型コロナウイルスを年齢別に見る」というもので防衛大臣というのが可笑しい。いかに厚生労働省が情報を公開していないか、そして見るに見かねて、ということかと思う。(厚労省資料5月7日)とあり、数字が並ぶだけなので下図に図化。


5月6日というから10日ほど前のデータである。この時点で感染者数は15000人、死亡者数は387人、ちょっと少ない気がするがとりあえず検証もせずそのまま採用。まず、陽性者の年齢分布、これはあちこちで公開されているが、20代から50代がモードを形成している。それらに次いでセミ現役の60代、60代以下の比率は8割。人口分布に近い気がするが、20歳未満が少ないという特徴も顕著である。
続いて防衛省経由でリークされた貴重な最新の死亡者数の年齢階級別死亡者分布。死亡者が高齢者に偏っていることが歴然、70歳以上で死亡者の8割以上を占める。先に述べた東京の統計と異なるが、5月6日時点の70歳未満の死亡者の実数は66人であった。残念ながらこれらの死亡者の感染前の状況はわからない。しかし、以前の合併症患者の割合が高いという情報、病院でのクラスター発生が多発していると実態、糖尿病患者とコロナウイルスの相性などから、健康な人が感染して死亡するケースはかなり稀ではないかと推測する。推測せねばならないという、先進国としての情報公開の実情が情けない。
多少横道に逸れた部分もあるが、ここから感染実態について重要な帰結を得られる。すなわち、感染しても70歳未満であれば死亡率は全体の死亡率の五分の一に過ぎず、1000人の死亡者になっても200人程度となる。この数は今までブログに書いたインフルエンザや結核、交通事故、そして自殺者に較べてはるかに少ない。
これが実態の認識ということである。実態を公開すると「外出自粛」の気が緩むからという政治判断なのか、それに与する新聞テレビの姿勢なのか、または単なる行政と各メディアの担当者の能力レベルの問題なのか。いずれにせよ、国民に実態は知らされておらず、現状は英知や理性とかけ離れた情報と報道ばかり。
もし前者だとすれば、国民に実態を知らせないという意味で、検閲がないにもかかわらず戦時中の大本営発表を垂れ流した新聞と全く同じ。そこにテレビという強力な媒体が加わっているから始末が悪い。世論とか国民の声とか新聞は書くが、要は新聞テレビが自己の洗脳結果に自己満足している図に過ぎない。
(続く)
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