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2020.08/22 [Sat]
「100年に一度の危機」と「戦後最大の下げ」(3)
前回の(2)で引用した「過去の遅々とした消費税の引き上げや財政赤字の拡大から見ると、インフレによる政府債務の大幅カットを伴わない財政再建は絶望的なように思われる。」の背景をまず記しておく。言葉だけではそれが、ウソかマコトかわからないから。幸いなことに関連記事が新聞に多数掲載されるので資料を作らずに済む。日経新聞に深謝。
日本の債務問題は前回触れたように今に始まった訳ではないが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で状況が一気に悪化、顕在化した結果誰の目から見てもあきらかになった。
その影響がコロナ対策に対する緊急的財政支出である。通常の国家予算と異な税収による財源はないため、各国は国債等の発行により財源を確保せねばならない。その額が下図。図では金額でなくGDP比で示している。アメリカが一番比率も、結果として金額も莫大なのは想定内だが、意外なのが日本、日本が感染者数や死者数に比して圧倒的に多く二位で11%ほど。政府が多額の給付金等で国民の生活の維持を図っていることがわかる。英国やフランスが被害の割に支出が少ないのと対照的。

国際比較を目的とするならGDP比で良いが、実額がどれほどなのかは分からない。以下、対GDP比の図が並ぶので、日本のGDPを確認しておく。内閣府の統計では2018年度までしか公表されてないが、日本はほとんど経済成長をしていない国なのでこのデータで十分。日本の実質GDPは535兆円程度と思えばよい。上図の日本のコロナ対策はよって60兆円弱、確かに何となくの認識と合っている。60兆円というと、日本の一年間の税収の総額とほぼ同じ。すなわち、一年分の税収すべてと同じ金額がコロナ対策に費やされる計画である。

パンデミックとあれば世界中状況は皆同じ。公的債務の過去120年間の推移を示す資料があった。もし0から作るとしたらこの図1枚を作るのに最低1年間はかかるだろうという貴重なデータ。図の標題にあるように、今回のコロナ対策で公的債務の世界の総額が第二次世界大戦直後を超えたという。1900年後半は戦後の疵をいやす大復興期、経済活動、そして結果としての経済成長も普遍的に著しかったため公的債務は順調に減少、即ち税収で返済され、1970年には健全化された。その後、経済活性化のため財政出動され続けるのだが、今回コロナ対策という非生産的な財政出動で公的債務は汎世界的に急増した。

国別の状況がこちら(誂えたような資料が一杯、改めて日経新聞に深謝)。どの国も今回公的債務は増加しているが、日本の水準が桁違いに大きいことがわかる。他国との違いはここ、以前から日本の公的債務が返済不能レベルにあることは明らかだったが、他国はコロナが収まり景気回復期に入れば増税もふくめて財政健全への目途が立つが、日本はダメ押し的なレベルに増加している。

そこで、日本の予算構造を見てみる。1975年からの単年度の税収と歳出、そして国債発行額が簡潔な図で示された優れもの。近年の概況を一言でいうと歳出100兆円を60兆円の税収と40兆円の国債で賄ってきた。その結果が地方も合わせ公的債務1000兆円越え。1000兆円という金額は、1億人が一人1000万円供出するとチャラになる額。1億人は非現実的だからと100万人から1000万円徴収しても10兆円で1%しか減らない。1億人から500万円徴収しても債務のGDP比を100%に半減できるだけ。

アメリカでは民主党候補のバイデン氏は、日本ではありえない大増税を公約としており、債務削減の意志を明らかにしている。EUも削減可能レベルなので増税と税収増、コスト削減で対処できる。しかし日本はとっくにその水準を超えている。
債務を放置した場合、何事も起きなければ孫子の代に借金の付けを回すことになる。増税は現役、すなわち子供世代に弁済してもらうのと同じ。
そこで現実的かつ根本的な解決策として唯一残るのがインフレ。6年前に「黒田さんの真意はインフレに寄る実質債務の削減」と書いたのは、以上のような不都合な真実が明瞭だったから。インフレにより物価や地価、収入等が2倍になれば税収も2倍になり、債務の価値は名目で同額でも価値は半分になる。その時、最大の影響を受けるのは年金生活者。年金の額は増えないから。さらに預貯金の額も、利率はインフレ率を下回るので価値が減る。わかりやすく言えばモノを買うのに2倍のお金が必要になる。藤巻氏のいうところの地獄。
一方、現役世代にとっては給料も上がるから痛みはない。また預貯金も少ないので金融資産の目減りの痛痒も少ない。孫世代にとっては国や地方の債務総額は健全化の見えるレベルに下がっていることだろう。要するに老人を除けば問題は少ない。
そしてそうなる可能性がかなり現実的になってきた、と見ている人が増えてきたのが現状。(続く)
日本の債務問題は前回触れたように今に始まった訳ではないが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で状況が一気に悪化、顕在化した結果誰の目から見てもあきらかになった。
その影響がコロナ対策に対する緊急的財政支出である。通常の国家予算と異な税収による財源はないため、各国は国債等の発行により財源を確保せねばならない。その額が下図。図では金額でなくGDP比で示している。アメリカが一番比率も、結果として金額も莫大なのは想定内だが、意外なのが日本、日本が感染者数や死者数に比して圧倒的に多く二位で11%ほど。政府が多額の給付金等で国民の生活の維持を図っていることがわかる。英国やフランスが被害の割に支出が少ないのと対照的。

国際比較を目的とするならGDP比で良いが、実額がどれほどなのかは分からない。以下、対GDP比の図が並ぶので、日本のGDPを確認しておく。内閣府の統計では2018年度までしか公表されてないが、日本はほとんど経済成長をしていない国なのでこのデータで十分。日本の実質GDPは535兆円程度と思えばよい。上図の日本のコロナ対策はよって60兆円弱、確かに何となくの認識と合っている。60兆円というと、日本の一年間の税収の総額とほぼ同じ。すなわち、一年分の税収すべてと同じ金額がコロナ対策に費やされる計画である。

パンデミックとあれば世界中状況は皆同じ。公的債務の過去120年間の推移を示す資料があった。もし0から作るとしたらこの図1枚を作るのに最低1年間はかかるだろうという貴重なデータ。図の標題にあるように、今回のコロナ対策で公的債務の世界の総額が第二次世界大戦直後を超えたという。1900年後半は戦後の疵をいやす大復興期、経済活動、そして結果としての経済成長も普遍的に著しかったため公的債務は順調に減少、即ち税収で返済され、1970年には健全化された。その後、経済活性化のため財政出動され続けるのだが、今回コロナ対策という非生産的な財政出動で公的債務は汎世界的に急増した。

国別の状況がこちら(誂えたような資料が一杯、改めて日経新聞に深謝)。どの国も今回公的債務は増加しているが、日本の水準が桁違いに大きいことがわかる。他国との違いはここ、以前から日本の公的債務が返済不能レベルにあることは明らかだったが、他国はコロナが収まり景気回復期に入れば増税もふくめて財政健全への目途が立つが、日本はダメ押し的なレベルに増加している。

そこで、日本の予算構造を見てみる。1975年からの単年度の税収と歳出、そして国債発行額が簡潔な図で示された優れもの。近年の概況を一言でいうと歳出100兆円を60兆円の税収と40兆円の国債で賄ってきた。その結果が地方も合わせ公的債務1000兆円越え。1000兆円という金額は、1億人が一人1000万円供出するとチャラになる額。1億人は非現実的だからと100万人から1000万円徴収しても10兆円で1%しか減らない。1億人から500万円徴収しても債務のGDP比を100%に半減できるだけ。

アメリカでは民主党候補のバイデン氏は、日本ではありえない大増税を公約としており、債務削減の意志を明らかにしている。EUも削減可能レベルなので増税と税収増、コスト削減で対処できる。しかし日本はとっくにその水準を超えている。
債務を放置した場合、何事も起きなければ孫子の代に借金の付けを回すことになる。増税は現役、すなわち子供世代に弁済してもらうのと同じ。
そこで現実的かつ根本的な解決策として唯一残るのがインフレ。6年前に「黒田さんの真意はインフレに寄る実質債務の削減」と書いたのは、以上のような不都合な真実が明瞭だったから。インフレにより物価や地価、収入等が2倍になれば税収も2倍になり、債務の価値は名目で同額でも価値は半分になる。その時、最大の影響を受けるのは年金生活者。年金の額は増えないから。さらに預貯金の額も、利率はインフレ率を下回るので価値が減る。わかりやすく言えばモノを買うのに2倍のお金が必要になる。藤巻氏のいうところの地獄。
一方、現役世代にとっては給料も上がるから痛みはない。また預貯金も少ないので金融資産の目減りの痛痒も少ない。孫世代にとっては国や地方の債務総額は健全化の見えるレベルに下がっていることだろう。要するに老人を除けば問題は少ない。
そしてそうなる可能性がかなり現実的になってきた、と見ている人が増えてきたのが現状。(続く)
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