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風の行方とハードボイルドワンダーランド

再雇用の機会を捨て自由な時と空間を・・・ 人は何のために生まれてきたのだろうか? これから本当の旅がはじまる・・・

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宇宙の化石

先日普通の人は興味ないだろうと思うがこんな記事に目が止まった。

半導体製造や医療機器などに使うヘリウムの輸入価格が高騰している。2020年の価格は19年比2割弱上昇、15年の高値を抜き過去50年で最高値となった。
貿易統計によると20年の輸入量は1381トンと前年比16%減少。30年ぶりの低水準に落ち込んだ。最大生産国の米国でガスの採取が滞り、米地質調査所(USGS)の推計によると20年の生産量は前年比17%減少した。


2月18日の日経朝刊記事 20210218ヘリウム価格

ヘリウムって一体いくらぐらいするの?というのが関心の中心で、答えはキロ当たり8000円。一昔前は2000円台だった。ヘリウム1キロと言われても雲をつかむというかガスをつかむことそのものなのでよくわからない。計算してみると約5.6立米だった。思ったほど大きな量ではない。それに対し8000円という価格が高いかというと、不当に安いのでは?というのがその時の感想だった。

十数年前、CO2を油層に圧入して石油の増産を図るというプロジェクトの企画推進のためアメリカの北西部を訪れたことがあった。大量のCO2源が必要なのでCO2の調達先を検討したが、その時にワイオミング州にあるエクソンモービル社が所有するLaBargeというガス田を知った。

ヘリウムは天然ガスに付随して生産されるが、どのガス田でもよいわけではなく高濃度のヘリウムを含んでなければならない。LaBargeは当時、アメリカの大ガス田のひとつでかつ最大のヘリウム生産ガス田であった。多分今もその地位はかわらないであろう。記憶があいまいだが、ヘリウムを4%ぐらい含んでいた気がする。この比率は通常のガス田に較べると桁違いであった。
20210218ヘリウム価格推移


実は宇宙、ここで言う宇宙は数千億個の銀河を含む全宇宙という意味、で最も多い物質は水素、次がヘリウムである。

もう一つ重要な事実がある。現在の姿の宇宙が誕生した時の最初の元素、すなわち物質は水素とヘリウムがほぼすべてであった。ベリリウムから鉄までの元素は、水素とヘリウムからなる原始星の内部で核融合によって生成された。鉄よりも大きな元素は、大きな原始星や次世代の巨大な恒星が超新星爆発をすることによって生まれた。

ヘリウムは元素であって、炭素と水素から成るメタンや水素と酸素からなる水と違って合成して作ることはできない。宇宙のすべてのヘリウムは、宇宙誕生時に生まれ現在に至ったものなのである。だから宇宙の生きる化石。LaBargeのヘリウムも46億年前の地球が形成される際に取り込まれたヘリウムが、何らかのメカニズムで濃縮されたものなのである。

さて宇宙は何らかの量子的ゆらぎがインフレーションによって超指数関数的に空間的に拡大することによって生まれた。それが約138億年前。誕生から現在のようななともな空間になった、「宇宙の晴れあがり」という、のは宇宙が誕生してから約38万年が経過してからである。この時に渾沌とした粒子のスープから水素とヘリウムが生まれた。すなわちヘリウムは138億年前の生きる化石。

宇宙に大量に存在するとはいえ、そんな由緒正しいありがたいものがキロ8000円というのは、やはりひどく貶められているような気がする。

下図は宇宙創成から現在までの時空区間の推移をわかりやすく示したもの。奇しくも1年ほど前に「地球と宇宙の寒冷化」という記事で用いた図を再掲した。「宇宙の晴れあがり」は図の左端にある黄緑色の底の部分にあたる。
060915_CMB_Timeline150.jpg

こちらがその黄緑色の底の元図で、宇宙のマイクロ波背景輻射のマップ。これも上述の寒冷化の記事に掲載したもので、お暇方はどうぞ→こちら
背景放射WMAP (2)

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