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2021.06/01 [Tue]
新型コロナウイルスワクチンの効果(6)
先日書いた新型コロナウイルスワクチンの効果(5)の改訂版。いささか言葉と資料に乏しかったので補足した。
日本ではヒステリックなまでにワクチン接種の遅れで世の中は騒々しいが、現在ワクチンの部分接種率が国民の約半分以上に達している国は、イスラエルの接種率63%を筆頭に9か国ある(イスラエル、イギリス、モンゴル、カナダ、チリ、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ、ウルグアイ、カタール)。図には、参考として累計感染者2位と3位のインドとブラジル、そして日本と世界平均もあわせて掲載した。
イスラエルとイギリスにおけるワクチン接種後の劇的な感染者の減少は世に知られているが、イギリスと他の国での接種率に大差はなく、これらの国の現状はいかなるものなのか、ヨーロッパの現状に引き続き新規感染者数の推移を見てみる。データと資料の出典はいつもの「札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学」特設ページ。

まず、これらの国のワクチン接種の進捗状況。イスラエルが接種開始時期も進捗率も一番、次いでイギリス、少し遅れてアメリカ、UAE、チリが三番手、さらに遅れて意外と言っては失礼だがカナダ、カタール、モンゴル、ウルグアイで接種が開始され、五月末時点で約国民の約半分がワクチンの部分接種を受けている。

いずれも順調にワクチン接種が進捗しているが、では新規感染者の推移はいかがだったのか?
下図は今年に入ってからのこれらの国の新規感染者数の推移、各国が一斉に比較的シンプルな右肩上がりのワクチン接種率カーブを描いていたのに対し、感染者の推移は混迷を極めている印象である。ちなみに横軸の時間軸は接種率の推移の図と同じ。50%とという高いワクチン接種率にもかかわらず、ワクチン接種によって感染者は激減するという期待には少なくとも応えていないように見える。なお、比較のため日本の感染者数推移も加えてあり、右下でイギリスと争っている薄緑が日本。

図があまりに煩雑なので上図のデータからワクチン接種率の関数として新規感染者数の推移を描いた(図が筆者作成)。以前にも触れたが、イスラエル(水色)では25%の接種率で感染者がピークアウトし以降感染者は激減した。同じく激減が観測されたのがイギリス(黄緑)とアメリカ(赤)で、両国は見かけ上5%未満の接種率の時点で感染者はピークアウトを示している。
注目すべきもう一つのポイントが、この3か国のピーク時の感染者数が他国と較べて倍以上ある点である。国民が感染しやすい何らかの理由があり、ゆえにワクチンが効果を発揮しているとも考えられる。逆にもともと感染者の率が低い国の国民は、何らかの自然ワクチンのようなすでに獲得している可能性もある。いわゆるファクターX。
一方他の6か国においては、感染者数の減少は見られるものの劇的な減少とは言い難い。共に約50%というワクチン接種率ながら、新感染者数の減少の速さはまちまち。アメリカの約10分の1が最大で、UAEでは半減というレベル。ヨーロッパで観測したように、世界に散在するワクチン接種先進国においても、新規感染者の減少=ワクチンの効果のばらつきは大きい。
効果のばらつきが大きいという不都合な真実は、ワクチンよりもより強力な感染拡大と収束に影響する何らかの要因の存在を意味しているように思われる。
いずれにせよ現在の緊急事態宣言下の日本の感染者率は、劇的に感染が収束したイギリスと同レベルにあり、日本でもイギリス人やアメリカ人と同様の劇的な減少が生じるかと問われれば、イエスとは答えにくい。

ここでアメリカの例を少し詳しく時系列で見る、下図は著者作成。ピークアウトした1月中旬から2月末まで一定の割合で接種が進み、3月初めから4月下旬まで接種が加速した。では、新規感染者はどう推移したか?
2月下旬までは感染者の急減を観測したが、同下旬に急減が消滅、4月中旬まで新規感染者は横ばいになっている(図の黄色線んの間)。この間は上述の通りワクチン接種が加速した時期で、接種率は15%から38%と倍増しているにもかかわらず、新規感染者数減少は見られなかった。

下図は上図と同じく今年の新規感染者数の推移であるが、アメリカに加え、南北アメリカ、全ヨーロッパ、アフリカ大陸全体のそれぞれの平均を合わせて示したものである。緑の線で示した期間は、アメリカの黄色の線で示した期間と同じである。
驚くべきことにアメリカで感染者は横ばいだったが、他の遠く離れた3つの広大なエリアでもマクロにみて、新規感染者数は横ばいだった。更に驚くべき事実は、黄色の枠で囲った年初のピークアウトからアメリカやイギリスで大幅な新規感染者減が観測された時期に、他の3地域でもまるで水泳のシンクロのように感染者がピークアウトし、感染者が減少していることである。ヨーロッパでは多少ワクチン接種が進んでいたかもしれないが、南アメリカの国々や、ましてやアフリカ大陸ではゼロに近いワクチン接種率であるにも関わらず、だ。まるで神の手に操られた操り人形のよう。
この事実は、明らかにワクチン以外の感染収束要因が毅然として存在しているためと考えた方が科学的、5%の接種率でのピークアウト、ワクチンって劇的に効くんだと思うのは間違いで運が良かっただけの可能性も否定できない。
ワクチンが感染防止に効果があるのは確か。一方、ワクチンよりもはるかに強大な感染の拡大や収束をコントロールする未解明の要因があるのも確かである。このこと自体は一年前からわかっていたが、期せずしてワクチンの世界的な接種の進捗により、その存在がより明らかになったように思われる。

日本ではヒステリックなまでにワクチン接種の遅れで世の中は騒々しいが、現在ワクチンの部分接種率が国民の約半分以上に達している国は、イスラエルの接種率63%を筆頭に9か国ある(イスラエル、イギリス、モンゴル、カナダ、チリ、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ、ウルグアイ、カタール)。図には、参考として累計感染者2位と3位のインドとブラジル、そして日本と世界平均もあわせて掲載した。
イスラエルとイギリスにおけるワクチン接種後の劇的な感染者の減少は世に知られているが、イギリスと他の国での接種率に大差はなく、これらの国の現状はいかなるものなのか、ヨーロッパの現状に引き続き新規感染者数の推移を見てみる。データと資料の出典はいつもの「札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学」特設ページ。

まず、これらの国のワクチン接種の進捗状況。イスラエルが接種開始時期も進捗率も一番、次いでイギリス、少し遅れてアメリカ、UAE、チリが三番手、さらに遅れて意外と言っては失礼だがカナダ、カタール、モンゴル、ウルグアイで接種が開始され、五月末時点で約国民の約半分がワクチンの部分接種を受けている。

いずれも順調にワクチン接種が進捗しているが、では新規感染者の推移はいかがだったのか?
下図は今年に入ってからのこれらの国の新規感染者数の推移、各国が一斉に比較的シンプルな右肩上がりのワクチン接種率カーブを描いていたのに対し、感染者の推移は混迷を極めている印象である。ちなみに横軸の時間軸は接種率の推移の図と同じ。50%とという高いワクチン接種率にもかかわらず、ワクチン接種によって感染者は激減するという期待には少なくとも応えていないように見える。なお、比較のため日本の感染者数推移も加えてあり、右下でイギリスと争っている薄緑が日本。

図があまりに煩雑なので上図のデータからワクチン接種率の関数として新規感染者数の推移を描いた(図が筆者作成)。以前にも触れたが、イスラエル(水色)では25%の接種率で感染者がピークアウトし以降感染者は激減した。同じく激減が観測されたのがイギリス(黄緑)とアメリカ(赤)で、両国は見かけ上5%未満の接種率の時点で感染者はピークアウトを示している。
注目すべきもう一つのポイントが、この3か国のピーク時の感染者数が他国と較べて倍以上ある点である。国民が感染しやすい何らかの理由があり、ゆえにワクチンが効果を発揮しているとも考えられる。逆にもともと感染者の率が低い国の国民は、何らかの自然ワクチンのようなすでに獲得している可能性もある。いわゆるファクターX。
一方他の6か国においては、感染者数の減少は見られるものの劇的な減少とは言い難い。共に約50%というワクチン接種率ながら、新感染者数の減少の速さはまちまち。アメリカの約10分の1が最大で、UAEでは半減というレベル。ヨーロッパで観測したように、世界に散在するワクチン接種先進国においても、新規感染者の減少=ワクチンの効果のばらつきは大きい。
効果のばらつきが大きいという不都合な真実は、ワクチンよりもより強力な感染拡大と収束に影響する何らかの要因の存在を意味しているように思われる。
いずれにせよ現在の緊急事態宣言下の日本の感染者率は、劇的に感染が収束したイギリスと同レベルにあり、日本でもイギリス人やアメリカ人と同様の劇的な減少が生じるかと問われれば、イエスとは答えにくい。

ここでアメリカの例を少し詳しく時系列で見る、下図は著者作成。ピークアウトした1月中旬から2月末まで一定の割合で接種が進み、3月初めから4月下旬まで接種が加速した。では、新規感染者はどう推移したか?
2月下旬までは感染者の急減を観測したが、同下旬に急減が消滅、4月中旬まで新規感染者は横ばいになっている(図の黄色線んの間)。この間は上述の通りワクチン接種が加速した時期で、接種率は15%から38%と倍増しているにもかかわらず、新規感染者数減少は見られなかった。

下図は上図と同じく今年の新規感染者数の推移であるが、アメリカに加え、南北アメリカ、全ヨーロッパ、アフリカ大陸全体のそれぞれの平均を合わせて示したものである。緑の線で示した期間は、アメリカの黄色の線で示した期間と同じである。
驚くべきことにアメリカで感染者は横ばいだったが、他の遠く離れた3つの広大なエリアでもマクロにみて、新規感染者数は横ばいだった。更に驚くべき事実は、黄色の枠で囲った年初のピークアウトからアメリカやイギリスで大幅な新規感染者減が観測された時期に、他の3地域でもまるで水泳のシンクロのように感染者がピークアウトし、感染者が減少していることである。ヨーロッパでは多少ワクチン接種が進んでいたかもしれないが、南アメリカの国々や、ましてやアフリカ大陸ではゼロに近いワクチン接種率であるにも関わらず、だ。まるで神の手に操られた操り人形のよう。
この事実は、明らかにワクチン以外の感染収束要因が毅然として存在しているためと考えた方が科学的、5%の接種率でのピークアウト、ワクチンって劇的に効くんだと思うのは間違いで運が良かっただけの可能性も否定できない。
ワクチンが感染防止に効果があるのは確か。一方、ワクチンよりもはるかに強大な感染の拡大や収束をコントロールする未解明の要因があるのも確かである。このこと自体は一年前からわかっていたが、期せずしてワクチンの世界的な接種の進捗により、その存在がより明らかになったように思われる。

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