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2021.10/08 [Fri]
氷山に突進中のタイタニック
朝刊に文芸春秋11月号の宣伝があった。目を引いたのが赤で示した「財務次官、モノ申す」というタイトルで筆者は矢野康治氏。小さな文字で「このままでは国家財政は破綻する 誰が総理になっても1166 兆円の“借金”からは逃げられない。コロナ対策は大事だが人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」とある。

ポイントは文藝春秋の執筆者が現職の財務次官であること。財務大臣の方が位は上だがスポークスマンのようなもので、国家の財務は財務次官が事実上のトップである。この方、7月に就任されたばかりだが、菅元首相の信認が厚く、一方省内きっての財政再建論者として知られているそうだ。財務省関係者によれば「『おかしい』と感じれば、たとえ相手が上司や閣僚であっても歯に衣着せぬ口調で糾弾する」タイプの方らしい。
こんな人
先日「終わりの始まり?」という記事を書いたが、その背景がGDPの2.6倍に及ぶ国債とその国債を買い支えているのが日銀という日本の財務構造。国家財政が破綻するという点では同じではあるが、ではいつ?というのはわからない。しかし、現在進行中の諸々の指標からほころびが顕在化するのが近いのでは?、と言うのがブログ記事。
一方同じ事とはいえ、現職の財務次官が赤裸々に日本の財務状況の危機感を月刊誌に寄稿したのだからこれは事件。実際ブルームバーグでは、矢野財務次官、「バラマキ的な政策論議」を批判-文芸春秋に寄稿なる記事をネットで公開していた。
同記事による寄稿の内容を拝借。
・最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえある
数十兆円もの大規模な経済対策がうたわれ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている
・今の日本の状況を例えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けている。
・日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいている。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかが分からない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいる
・昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっている。財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えない。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もある
おまけとしてこんな記述も。
鈴木俊一財務相は8日の閣議後会見で、寄稿の内容は政府の方針に反するようなものではなく、麻生太郎前財務相にも了解を得ていると説明。個人的な思いをつづったものであり、「問題だという思いは持っていない」と話した。ただ鈴木氏自身はまだ読んでいないという。
ネットの「文春オンライン」で矢野記事の本文の一部を見ることができる。一部引用すると;
先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、『不都合な真実』もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」
柔らかい表現だが、この文章、論理的には近い将来「大きな負担が国民にのしかかってきます」という国民宛の警告文である。最初の文は「確かなのです」という断言である。一方二番目の文は「ねばなりません」という遠いものを見るような目線での物言い。三番目の文は、「そうしなければ」と暗に解決策を取ればよいとの印象を与えるが、現実的解決策はないから、大きな負担を覚悟してくださいということになる。時期に直接触れていないものの、氷山に向かって突進しているとあれば、すぐそこにある危機という印象をお持ちなのだろう。
実態がどうなるかはこれまで書いてきたので今回はスルー。
もう一つの解決策が、元日本維新の会の参議院議員藤巻健史氏のいう、日銀を破産させ新たな中央銀行を創設するというもの。日銀券は紙くずになる。ジンバブエだけでなく、第二次世界大戦後のドイツや日本で実際にそうやってインフレを解決した実績があり、絵空事ではない。ストック、すなわち円の預貯金などの金融資産に頼る人や年金生活者には減価が著しく地獄だが、金融資産を持たない若いフロー収入のある人達にとっては悪い話ではない。
2020年10月24日の記事から

野党が選挙公約で、岸田内閣に負けるなとバラマキ合戦になるのをけん制する狙い、というような解説記事が明日以降新聞テレビで賑わうと思うが、本文を読んでいないものの、実は国民への啓蒙という志とご理解申しあげた。
実はこの方、2005年にこんな本を書いておられる。主計局主計企画官時代の見識をまとめ上げたものだろう。
『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』東信堂

ポイントは文藝春秋の執筆者が現職の財務次官であること。財務大臣の方が位は上だがスポークスマンのようなもので、国家の財務は財務次官が事実上のトップである。この方、7月に就任されたばかりだが、菅元首相の信認が厚く、一方省内きっての財政再建論者として知られているそうだ。財務省関係者によれば「『おかしい』と感じれば、たとえ相手が上司や閣僚であっても歯に衣着せぬ口調で糾弾する」タイプの方らしい。
こんな人

先日「終わりの始まり?」という記事を書いたが、その背景がGDPの2.6倍に及ぶ国債とその国債を買い支えているのが日銀という日本の財務構造。国家財政が破綻するという点では同じではあるが、ではいつ?というのはわからない。しかし、現在進行中の諸々の指標からほころびが顕在化するのが近いのでは?、と言うのがブログ記事。
一方同じ事とはいえ、現職の財務次官が赤裸々に日本の財務状況の危機感を月刊誌に寄稿したのだからこれは事件。実際ブルームバーグでは、矢野財務次官、「バラマキ的な政策論議」を批判-文芸春秋に寄稿なる記事をネットで公開していた。
同記事による寄稿の内容を拝借。
・最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえある
数十兆円もの大規模な経済対策がうたわれ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている
・今の日本の状況を例えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けている。
・日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいている。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかが分からない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいる
・昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっている。財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えない。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もある
おまけとしてこんな記述も。
鈴木俊一財務相は8日の閣議後会見で、寄稿の内容は政府の方針に反するようなものではなく、麻生太郎前財務相にも了解を得ていると説明。個人的な思いをつづったものであり、「問題だという思いは持っていない」と話した。ただ鈴木氏自身はまだ読んでいないという。
ネットの「文春オンライン」で矢野記事の本文の一部を見ることができる。一部引用すると;
先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、『不都合な真実』もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」
柔らかい表現だが、この文章、論理的には近い将来「大きな負担が国民にのしかかってきます」という国民宛の警告文である。最初の文は「確かなのです」という断言である。一方二番目の文は「ねばなりません」という遠いものを見るような目線での物言い。三番目の文は、「そうしなければ」と暗に解決策を取ればよいとの印象を与えるが、現実的解決策はないから、大きな負担を覚悟してくださいということになる。時期に直接触れていないものの、氷山に向かって突進しているとあれば、すぐそこにある危機という印象をお持ちなのだろう。
実態がどうなるかはこれまで書いてきたので今回はスルー。
もう一つの解決策が、元日本維新の会の参議院議員藤巻健史氏のいう、日銀を破産させ新たな中央銀行を創設するというもの。日銀券は紙くずになる。ジンバブエだけでなく、第二次世界大戦後のドイツや日本で実際にそうやってインフレを解決した実績があり、絵空事ではない。ストック、すなわち円の預貯金などの金融資産に頼る人や年金生活者には減価が著しく地獄だが、金融資産を持たない若いフロー収入のある人達にとっては悪い話ではない。
2020年10月24日の記事から

野党が選挙公約で、岸田内閣に負けるなとバラマキ合戦になるのをけん制する狙い、というような解説記事が明日以降新聞テレビで賑わうと思うが、本文を読んでいないものの、実は国民への啓蒙という志とご理解申しあげた。
実はこの方、2005年にこんな本を書いておられる。主計局主計企画官時代の見識をまとめ上げたものだろう。
『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』東信堂
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