Entries
2021.12/13 [Mon]
CO2排出量削減による地球温暖化防止効果の検証(完成版)
先日の縄文時代の気候の話では現在に敷衍し、こう書いた。
図に明らかなようにCO2の排出量が1981年比1.8倍に増えているが、CO2濃度は1.2倍にしかなっていない。現実的にどれだけ削減できるのか?半減できたとしてCO2濃度の低下効果はわずかでありどれほどの地球温暖化防止に寄与できるのか?
感想文のようだが、根拠があっての話なので今回はそれについて詳述する。いつものようにひとり世界に歯向かうのが好き。
まず、温暖化の仕組みの一つの要素である温暖化ガス効果について。資料は一般社団法人 地球温暖化防止全国ネットのHPによる。本文にはこうある。確かに定性的にそういう効果はありそうだ。
太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めています。これが地球温暖化です。
次の章には具体的な数字が並んだこんな記載も。
IPCC第4次評価報告書によれば、温室効果ガス別の地球温暖化への寄与は、二酸化炭素76.7%、メタン14.3%、一酸化二窒素7.9%、オゾン層破壊物質でもあるフロン類(CFCs、HCFCs)1.1%、となっています。つまり、石油や石炭など化石燃料の燃焼などによって排出される二酸化炭素が最大の温暖化の原因と言えます。この二酸化炭素濃度は、産業革命前1750年の280ppmから2013年には400ppmを超え、実に40%以上も増加しており(以下略)
産業革命前は火力発電などなく、石炭の消費量も所詮わずか、そのころで280ppm、前回のCO2濃度の図で示した1970年時点の濃度は323ppmぐらい。すなわち自然増も含め人類誕生以来産業革命までで280ppmのCO2濃度に達し、その後の150年で40ちょっと増えた。ただし、CO2 排出量のデータはないので排出量と濃度の増加の関係はわからない。そしてその後の50年である現在はさらに70ppm増えたという構造である。ここまでCO2濃度に関しての時間推移はすべてデータの語る真実。

幸い、現代においてはCO2排出量の合理的推察に基づくと見られるデータがある。それが前回示したCO2排出量と濃度の関係。プロットは前の図と同じ。違うのは図の色と1970年代のCO2濃度の増加傾向の延長戦を黄色で付け加えたこと。
前回の記事でこう記述した。「(CO2濃度が)ほぼ直線的に増加しているようだが、正確にはわずかながら濃度の上昇は加速している。」。この加速の原因が、その後の1.8倍になったCO2排出量の増加である。1980年ごろの年間排出量180憶トンが335億トンほどに増えた。大気の量に較べれば排出量は微々たるものなので、大気のCO2濃度としては70ppmのの増加、濃度で言えば20%増という観測値になるのはそのためである。

さらにこの図は意味が深い。1970年以前のCO2排出量は1981年より少なかったろう、たぶん現在の半分ぐらい、すなわち世界が目標とする50%減。それでもCO2濃度は増加していた。半減していたとしても黄色の外挿レベルの増加は続いていた。
もう一点は、排出量の濃度に与える感度である。1981年レベルを超えて排出されたCO2の40年間の累積量は約3000憶トン。あまりに莫大で大きいのか小さいのかわからないが、明日それについては書く。この量が大気に放出されたわけで、その結果CO2濃度は70ppm増えたというのが観測値の語るところである。明日CO2濃度がゼロになっても実質的に大きく減少することはない。これは単純なマテリアルバランスの話。これもデータの語る真実である。
現在の脱炭素の流れ。毎年少しずつだろうがドラスティックにだろうが、CO2排出量を削減しても大気中のCO2濃度に変化はほとんどない。その変化を長年続ければ濃度の低下は観測されるだろうが、それが地球温暖化につながるかというのは別な話である。
では世界中で毎年排出されるCO2の量は如何ほどか?下記資料では335憶トン。うち日本の排出量は3.2%の約10憶トンほどである。中国が最大の排出国で28%、欧米等の先進国で5割ぐらい、残りの発展途上国などで約4分の1というイメージ。先進国が莫大な投資により排出量を半減さても削減量は年間80億トン程度、発展途上国において太陽光発電や風力発電などを期待できそうもないしむしろ増加していく可能性のほうが大きいぐらい。中国の寄与があっても、2050年に世界の合計で半減できればいい方だろう。

もう少しリアリティを感じられるように日本のCO2削減計画を見てみる。出典は経済産業省。現在の10.4憶トンをとりあえず2030年に46%削減するという絵だが、原子力発電ヒステリーの中でその方策は太陽光や風力、水素などにより現在の火力発電エネルギーを賄うというもの。それぞれに技術的社会的経済的問題が山ほどある。
そもそも社会的変革は経済性もしくはコスト減や利益増によって推進されるもの、CO2削減は環境という美名に動機づけられている。そんなものは実際問題として社会的変革のドライバーにはならない。だから図中にあるように、「規制的措置と支援的措置という財政措置により」という説明がつけられている。要するに自発的削減努力に頼っていては削減目標の達成は不可能だから。どう見ても無理筋。日本の財政状態や経済の先行きはそんな陽気にはないのが現実。さらに日本がいくら頑張って削減しても世界全体の1.6%。
一昔前に、環境保護だかエネルギー節約だか理由は忘れたが、会社の昼間の電灯を消灯するとか、マイ箸とかいって割りばしの削減の削減に寄与しているという人がいたが、すぐに馬鹿げていることに気付いたのかやらなくなった。今回はもう少し根が深そうだからどうなるかわからないが、やがて人々は気づくだろう。

最後に温暖化の根拠とされる図。最新版であるIPCCの第6次評価報告書にあるシミュレーション結果。先に述べた一般社団法人 地球温暖化防止全国ネットのHPから借用。そもそもシミュレーションというものは、いくつかの物理現象を計算するものであって、地球の温暖化の影響因子をすべて含んでいるものではない。次に仮定として入力するデータ次第で結果はどうにでもなる。図の実線の周りにある帯はその不確実性の範囲。

下図は先の縄文時代の話の時に示した図の再掲版。海面の高さの上昇は気温の上昇を示しており、現在は第四間氷期の温暖期に位置する。もしICPPのシミュレーターが第一から第三までの間氷期の開始から終焉をシミュレートできるなら上図のシミュレーション結果を信じてもいいが、絶対を付けて記すが、これら地球規模の気候変動は織り込まれていない。多少の地球温暖化は間氷期にあっては当然のことなのである。

図に明らかなようにCO2の排出量が1981年比1.8倍に増えているが、CO2濃度は1.2倍にしかなっていない。現実的にどれだけ削減できるのか?半減できたとしてCO2濃度の低下効果はわずかでありどれほどの地球温暖化防止に寄与できるのか?
感想文のようだが、根拠があっての話なので今回はそれについて詳述する。いつものようにひとり世界に歯向かうのが好き。
まず、温暖化の仕組みの一つの要素である温暖化ガス効果について。資料は一般社団法人 地球温暖化防止全国ネットのHPによる。本文にはこうある。確かに定性的にそういう効果はありそうだ。
太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めています。これが地球温暖化です。
次の章には具体的な数字が並んだこんな記載も。
IPCC第4次評価報告書によれば、温室効果ガス別の地球温暖化への寄与は、二酸化炭素76.7%、メタン14.3%、一酸化二窒素7.9%、オゾン層破壊物質でもあるフロン類(CFCs、HCFCs)1.1%、となっています。つまり、石油や石炭など化石燃料の燃焼などによって排出される二酸化炭素が最大の温暖化の原因と言えます。この二酸化炭素濃度は、産業革命前1750年の280ppmから2013年には400ppmを超え、実に40%以上も増加しており(以下略)
産業革命前は火力発電などなく、石炭の消費量も所詮わずか、そのころで280ppm、前回のCO2濃度の図で示した1970年時点の濃度は323ppmぐらい。すなわち自然増も含め人類誕生以来産業革命までで280ppmのCO2濃度に達し、その後の150年で40ちょっと増えた。ただし、CO2 排出量のデータはないので排出量と濃度の増加の関係はわからない。そしてその後の50年である現在はさらに70ppm増えたという構造である。ここまでCO2濃度に関しての時間推移はすべてデータの語る真実。

幸い、現代においてはCO2排出量の合理的推察に基づくと見られるデータがある。それが前回示したCO2排出量と濃度の関係。プロットは前の図と同じ。違うのは図の色と1970年代のCO2濃度の増加傾向の延長戦を黄色で付け加えたこと。
前回の記事でこう記述した。「(CO2濃度が)ほぼ直線的に増加しているようだが、正確にはわずかながら濃度の上昇は加速している。」。この加速の原因が、その後の1.8倍になったCO2排出量の増加である。1980年ごろの年間排出量180憶トンが335億トンほどに増えた。大気の量に較べれば排出量は微々たるものなので、大気のCO2濃度としては70ppmのの増加、濃度で言えば20%増という観測値になるのはそのためである。

さらにこの図は意味が深い。1970年以前のCO2排出量は1981年より少なかったろう、たぶん現在の半分ぐらい、すなわち世界が目標とする50%減。それでもCO2濃度は増加していた。半減していたとしても黄色の外挿レベルの増加は続いていた。
もう一点は、排出量の濃度に与える感度である。1981年レベルを超えて排出されたCO2の40年間の累積量は約3000憶トン。あまりに莫大で大きいのか小さいのかわからないが、明日それについては書く。この量が大気に放出されたわけで、その結果CO2濃度は70ppm増えたというのが観測値の語るところである。明日CO2濃度がゼロになっても実質的に大きく減少することはない。これは単純なマテリアルバランスの話。これもデータの語る真実である。
現在の脱炭素の流れ。毎年少しずつだろうがドラスティックにだろうが、CO2排出量を削減しても大気中のCO2濃度に変化はほとんどない。その変化を長年続ければ濃度の低下は観測されるだろうが、それが地球温暖化につながるかというのは別な話である。
では世界中で毎年排出されるCO2の量は如何ほどか?下記資料では335憶トン。うち日本の排出量は3.2%の約10憶トンほどである。中国が最大の排出国で28%、欧米等の先進国で5割ぐらい、残りの発展途上国などで約4分の1というイメージ。先進国が莫大な投資により排出量を半減さても削減量は年間80億トン程度、発展途上国において太陽光発電や風力発電などを期待できそうもないしむしろ増加していく可能性のほうが大きいぐらい。中国の寄与があっても、2050年に世界の合計で半減できればいい方だろう。

もう少しリアリティを感じられるように日本のCO2削減計画を見てみる。出典は経済産業省。現在の10.4憶トンをとりあえず2030年に46%削減するという絵だが、原子力発電ヒステリーの中でその方策は太陽光や風力、水素などにより現在の火力発電エネルギーを賄うというもの。それぞれに技術的社会的経済的問題が山ほどある。
そもそも社会的変革は経済性もしくはコスト減や利益増によって推進されるもの、CO2削減は環境という美名に動機づけられている。そんなものは実際問題として社会的変革のドライバーにはならない。だから図中にあるように、「規制的措置と支援的措置という財政措置により」という説明がつけられている。要するに自発的削減努力に頼っていては削減目標の達成は不可能だから。どう見ても無理筋。日本の財政状態や経済の先行きはそんな陽気にはないのが現実。さらに日本がいくら頑張って削減しても世界全体の1.6%。
一昔前に、環境保護だかエネルギー節約だか理由は忘れたが、会社の昼間の電灯を消灯するとか、マイ箸とかいって割りばしの削減の削減に寄与しているという人がいたが、すぐに馬鹿げていることに気付いたのかやらなくなった。今回はもう少し根が深そうだからどうなるかわからないが、やがて人々は気づくだろう。

最後に温暖化の根拠とされる図。最新版であるIPCCの第6次評価報告書にあるシミュレーション結果。先に述べた一般社団法人 地球温暖化防止全国ネットのHPから借用。そもそもシミュレーションというものは、いくつかの物理現象を計算するものであって、地球の温暖化の影響因子をすべて含んでいるものではない。次に仮定として入力するデータ次第で結果はどうにでもなる。図の実線の周りにある帯はその不確実性の範囲。

下図は先の縄文時代の話の時に示した図の再掲版。海面の高さの上昇は気温の上昇を示しており、現在は第四間氷期の温暖期に位置する。もしICPPのシミュレーターが第一から第三までの間氷期の開始から終焉をシミュレートできるなら上図のシミュレーション結果を信じてもいいが、絶対を付けて記すが、これら地球規模の気候変動は織り込まれていない。多少の地球温暖化は間氷期にあっては当然のことなのである。

- 関連記事
-
- 大寒波の来襲
- 大雪の結果発表
- CO2排出量削減による地球温暖化防止効果の検証(完成版)
- 縄文遺跡と地球温暖化(2)
- 縄文遺跡と地球温暖化(1)
スポンサーサイト
*Comment
Comment_form