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2021.12/26 [Sun]
新型コロナの未来(2)
はじめて新型コロナに関する記事を書いたのは約2年前になる2020年の2月末、「コロナ vs. インフルエンザ」というタイトルの記事だった(→こちら)。当時はコロナウイルスに関する情報も知識もなかったが、なんとなく類似性を感じたのだろう。日本における最大の感染症が季節性インフルエンザ、その実態を理解しておくことは正しく新型コロナを理解するための基礎知識として不可欠である。
そんなインフルエンザの日本における感染状況について何回か記してきたが、最新の感染状況を含め改めて記す。まず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認された2020年春に先立つ2018年末からの季節性インフルエンザ患者の週次データの推移。出典は厚生労働省HP。赤線は各年の第1週である。
図に明らかなように毎年11月から患者が増え始め1-2月にピークを達成、春に収束する。なぜ毎年繰り返すかというと、インフルエンザウイルスの変異により毎年インフルエンザウイルスの種類が異なるため。COVID-19において変異種(株)の違いにより第一波、二波と繰り返してきたのと同じ。厚生労働省は2020年春のHPでインフルエンザついてこう解説していた。
1)例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。
2)国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。
3)また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。
なお、コロナウイルスの確認された2019/20の感染者推移が腰砕けに終わって見えるのはコロナウイルスの影響。さらに2021年にはインフルエンザの患者の発生は全く見られなかった。

下図は2011年から今年の11月までのインフルエンザ感染者数の週次推移を重ね合わせた資料、出典は国立感染症研究所HP。インフルエンザが程度の差はあれ秋に流行が始まり、その後感染が爆発1-2月にピークを観測して収束するパターを栗化していることがわかる。
しかし、2020年の第13週を最後に、日本ではインフルエンザは絶滅したと言ってよいだろう。

これが厚生労働省による最新(第50週)のインフルエンザ患者数である。流行開始時期なので例年の感染者数も少ないにもかかわらず、去年同様今年もほぼゼロである。

なぜ、2019/20の感染者推移が腰砕けに終わり、2020年ではインフルエンザが絶滅したのか?2020年の夏から秋にかけては、冬になればCOVID-19とインフルエンザの両者が同時流行するツインデミックになると、専門家も政府も警鐘を鳴らしていた。下図は2020年7月に公表された日本感染症学会の医師に対する啓蒙文書。

そんな雰囲気の中で、ツインデミック、すなわちインフルエンザは流行しない、との記事を3回に分けて書いた。そこになぜ、インフルエンザが流行しないかの証明を比較的丁寧に記した。日本でインフルエンザは流行しないと実名で断言した記事はたぶんこの記事だけ。ブログだけではもったいないので、3編を一つの記事にまとめアゴラに投降し採用された。
→こちら

コロナの記事なのに、なぜくどくどとインフルエンザについて記しているのだろうと、訝しく思う人もいるだろう。実はコロナウイルスとインフルエンザウイルスはよく似ているのである。少なくとも、新型コロナウイルス騒ぎの先行きがどうなるかを見通すためにはインフルエンザとのアナロジーを認識する必要があったから。
下図は新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの構造、両者ともRNAウイルスであり、構造的にも素人目にはよく似て見える。受容体が異なるので感染した部位が異なり、よって発症した場合の症状が異なるだけで、感染から発症までのプロセス、変異の仕組みなどは本質的に同質である。ある先生がこう解説していた。
・新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは、大きさも形も非常によく似ています。いずれも直径約100nmの球状で、カプシドというタンパク質の殻の中にゲノム(遺伝物質)が入った、ウイルスでは一般的な作りになっています。
・ウイルスには、カプシドがエンベロープと呼ばれる脂質膜で覆われたものと、そうでないものがありますが、新型コロナとインフルはいずれもエンベロープを持つウイルスです。このエンベロープは、アルコールや石鹸に弱いという特徴があります。
・また、両ウイルスとも、表面にタンパク質がとげのようについています。ウイルスが人体に感染する際、このタンパク質が人体の細胞にある受容体と結合します。新型コロナとインフルは表面についているタンパク質の種類が違うので、対応する受容体も異なります。

(続く)
そんなインフルエンザの日本における感染状況について何回か記してきたが、最新の感染状況を含め改めて記す。まず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認された2020年春に先立つ2018年末からの季節性インフルエンザ患者の週次データの推移。出典は厚生労働省HP。赤線は各年の第1週である。
図に明らかなように毎年11月から患者が増え始め1-2月にピークを達成、春に収束する。なぜ毎年繰り返すかというと、インフルエンザウイルスの変異により毎年インフルエンザウイルスの種類が異なるため。COVID-19において変異種(株)の違いにより第一波、二波と繰り返してきたのと同じ。厚生労働省は2020年春のHPでインフルエンザついてこう解説していた。
1)例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。
2)国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。
3)また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。
なお、コロナウイルスの確認された2019/20の感染者推移が腰砕けに終わって見えるのはコロナウイルスの影響。さらに2021年にはインフルエンザの患者の発生は全く見られなかった。

下図は2011年から今年の11月までのインフルエンザ感染者数の週次推移を重ね合わせた資料、出典は国立感染症研究所HP。インフルエンザが程度の差はあれ秋に流行が始まり、その後感染が爆発1-2月にピークを観測して収束するパターを栗化していることがわかる。
しかし、2020年の第13週を最後に、日本ではインフルエンザは絶滅したと言ってよいだろう。

これが厚生労働省による最新(第50週)のインフルエンザ患者数である。流行開始時期なので例年の感染者数も少ないにもかかわらず、去年同様今年もほぼゼロである。

なぜ、2019/20の感染者推移が腰砕けに終わり、2020年ではインフルエンザが絶滅したのか?2020年の夏から秋にかけては、冬になればCOVID-19とインフルエンザの両者が同時流行するツインデミックになると、専門家も政府も警鐘を鳴らしていた。下図は2020年7月に公表された日本感染症学会の医師に対する啓蒙文書。

そんな雰囲気の中で、ツインデミック、すなわちインフルエンザは流行しない、との記事を3回に分けて書いた。そこになぜ、インフルエンザが流行しないかの証明を比較的丁寧に記した。日本でインフルエンザは流行しないと実名で断言した記事はたぶんこの記事だけ。ブログだけではもったいないので、3編を一つの記事にまとめアゴラに投降し採用された。
→こちら

コロナの記事なのに、なぜくどくどとインフルエンザについて記しているのだろうと、訝しく思う人もいるだろう。実はコロナウイルスとインフルエンザウイルスはよく似ているのである。少なくとも、新型コロナウイルス騒ぎの先行きがどうなるかを見通すためにはインフルエンザとのアナロジーを認識する必要があったから。
下図は新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの構造、両者ともRNAウイルスであり、構造的にも素人目にはよく似て見える。受容体が異なるので感染した部位が異なり、よって発症した場合の症状が異なるだけで、感染から発症までのプロセス、変異の仕組みなどは本質的に同質である。ある先生がこう解説していた。
・新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは、大きさも形も非常によく似ています。いずれも直径約100nmの球状で、カプシドというタンパク質の殻の中にゲノム(遺伝物質)が入った、ウイルスでは一般的な作りになっています。
・ウイルスには、カプシドがエンベロープと呼ばれる脂質膜で覆われたものと、そうでないものがありますが、新型コロナとインフルはいずれもエンベロープを持つウイルスです。このエンベロープは、アルコールや石鹸に弱いという特徴があります。
・また、両ウイルスとも、表面にタンパク質がとげのようについています。ウイルスが人体に感染する際、このタンパク質が人体の細胞にある受容体と結合します。新型コロナとインフルは表面についているタンパク質の種類が違うので、対応する受容体も異なります。

(続く)
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