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ウクライナ侵攻:戦争を望んでいるのは誰か?

4月末にアゴラに掲題の記事を投稿し、GW中の5月4日に掲載された。ウクライナ問題の本質を論証したつもりだったが、ロシア叩きという世の風潮のなかでは、残念ながら理解を得ることはできなかったようだ。
20220504ウクライナ

この記事、普段とは逆にブログには書かなかったので以下全文を掲載しておく。

ロシアによるウクライナ侵攻開始後の3月7日にアゴラに「ウクライナ軍事侵攻:あおり運転は犯罪」という記事を書いた。記事ではロシアをめぐる近代史と地政学上の要点について触れ、昨年12月のプーチン大統領とバイデン大統領のオンラインによる直接対話から2月24日のプーチン大統領による軍事作戦開始までの経緯を、新聞記事の抜粋を並べることにより侵攻前の外交交渉の実態を示した。プーチン氏の発言も多く含まれている。→こちら

結論部分としてこう記した。
「事態は改善の兆しを見せないままロシアはウクライナへの軍事侵攻へと導かれていく。欧米、特にアメリカにとっては、ロシアのウクライナへの侵攻を待ち、この機にロシアを極悪人に仕立て上げ、ロシアの国力を一気に葬ることが当初からの目的だったように思われてならない。むしろ戦争を望んでいたのはアメリカである疑いは否定しがたいという見方も可能である。アメリカにとっては、ロシアが侵攻した後は刻刻と変化する侵攻行為そのものを日々非難してさえいれば正義の味方になれる。軍事侵攻自体を擁護する国はありえないから。まさにあおり運転の確信犯。」

改めてロシアとNATO加盟国、そしてウクライナの位置を確認しておく。白で塗られた国は中立国、もしくはNATO未加盟国。
Map_of_NATO 640x560

今日まで侵攻開始から約2か月が経過した。ロシアが昨年夏または秋ごろよりウクライナ国境に軍隊を終結していることをアメリカは当然周知していた。その間にアメリカはロシアによるウクライナ侵攻の現実化に付随する膨大なシナリオがスタディされたことに疑いはない。ウクライナにおける戦況や社会的人的被害だけでなく、世界経済に対する影響、世界各国の反応も含まれていたはずだ。

侵攻後の展開は、たぶんアメリカのメインシナリオに沿ったものになっていると思われる。バイデン氏のロシアに対する非難もシナリオ通りに現在も繰り返されている。3月3日の日経新聞の朝刊と夕刊のトップの見出しは以下のようなものだった。まさにアゴラ記事に書いたように、侵攻が開始された後は戦況について語れば誰も反論できない。
・「独裁者に侵攻の代償」 対ロシア、民主主義結束訴え 米大統領が一般教書演説
・ロシア非難、141カ国賛成 「即時撤退を」 国連総会決議、中国・インドは棄権

バイデン大統領との直接対話から二か月半が経過した2月24日、ロシアのプーチン大統領はテレビ演説でウクライナへの軍事作戦の開始を表明した。バイデン氏との直接対話による外交交渉からの一貫した主張である。

30年にわたり、欧州の安全保障の原則について合意を目指してきた。北大西洋条約機構(NATO)は我が国が抗議したにもかかわらず、拡大を続けてきた。2021年12月にも米国などと再度合意を試みたが、米国の立場は変わっていない。隣接する領土にも対抗的な「反ロシア」が生まれている。NATOの継続的な拡大はロシアの生死にかかわる脅威だ。

停戦協定の機運は何回か報道された。ロシアの要求の中心は、12月7日のバイデン大統領との直接対話で語ったウクライナの中立化、もしくはNATOの東方拡大を排除する信頼ある法的に定められた保証だった。2月初めにはロシアの立場に理解していたマクロン仏大統領も、7日のプーチン氏との会談ではNATO側の立場になってしまった(前の記事に記載)。しかしNATO側はNOの返答で和平への道はまだ見えない。

アメリカの真意は想像する他はないので以下は筆者の見立て。アメリカの真意は、この機にロシアと直接戦うことなくロシアを壊滅に追い込むことだったと思われる。前述のシナリオ分析により、ロシアの提案を拒否すればロシアがウクライナに軍事侵攻すること、そしてウクライナ侵攻による世界的な経済の混乱や各国国民の経済的社会的不安、ウクライナの犠牲はいずれもアメリカにとっては想定内でのはず。

それらの甚大なマイナスの影響を避ける意思があれば、ウクライナに中立を促し、一方ロシアに不可侵条約の締結を促すなど外交交渉による戦争を避ける術はあった。

一方、ロシアの壊滅を目的とするのであれば、アメリカにとってはロシアのウクライナへの侵攻が不可欠であった。その確固たる決意の表明が12月の会談結果であり、1月のプーチン大統領への書面回答だった(前の記事に記載)。ロシアの侵攻なくしては世界が一丸となってロシアを叩くことができない。

そして、アメリカの読み通りにロシアのウクライナ侵攻後の日本の新聞テレビ等の報道は、ウクライナでの戦況報告とウクライナの被害、そして論調は軍事侵攻したロシアへの糾弾が主体。アメリカからの発言も、ロシアの軍事侵攻以降の出来事に限られていると言っても過言ではない。冷静な経緯の分析に言及したものを見たことがない。

現在はアメリカを含むNATOの主要国はウクライナに武器を供与し、G7各国を中心にロシアに対する経済制裁が強化され、ロシアの孤立化を図るアメリカのシナリオ通りに事態は進捗しているように見える。アメリカや西欧諸国にとって戦争の当事者であるのはウクライナ、痛くも痒くもない。原油や穀物などコモディティ価格の高騰も、ロシアの脅威(とアメリカは思っているのだろう)に較べれば大した問題ではないということなのだろう。

冒頭の地図に戻る。アメリカにロシアとの軍事的緊張を緩和し平和を希求する意思が少しでもあれば、昨年の12月の両国の直接対話の機にロシアの立場にも多少の理解を示し、外交交渉に持ち込むことはできたはずだ。世界的な甚大な諸々のマイナスの影響を避けることができただけでなく、ロシアとの和平への道筋が開かれたた可能性さえあった。しかし戦況は日々変化してゆき今や事態は非可逆的状況に陥り、アメリカにも中途半端な停戦の意思はないだろう。どのような形で停戦が実現するのか。

たぶん多分唯一の停戦の道は、アメリカを除くNATOの国々と日本がロシアのウクライナ侵攻に至る背景や経緯を冷静に検証し、アメリカに対して、ロシアの要求するウクライナの中立化とそれに対するロシアの対価に関する外交交渉を提案、実現することかと思う。
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