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2022.06/22 [Wed]
日本沈没の危機(1)

オーストラリアの中央銀行が、「2021年11月に撤廃した金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)について「撤廃を巡る混乱で中銀への信頼に打撃を与えた」と総括し、「再び採用する可能性は低い」との見解を示した。中銀がインフレに伴う金利上昇圧力を抑え込む難しさを改めて示した格好だ。」、という記事。なんのことかいな、ということで豆記事扱い、かつ目にとめる人もほとんどいないだろう。
先日、「6月に入り為替や債券、株式、商品各市場で日々ドラマが生じるので寝る間もない」と書いたが、現在日本は大海の大波に揉まれて、沈没しかねない状況にある。去年の氷山に向かって突進中のタイタニック号の話も記憶に新しい。違いは日本をとりまく環境が危惧された方向に顕在化しているだけ。上記の引用に債券が入っているのは飾りではない。金利動向を決定する日米の中央銀行のスタンスなど、金融市場が大荒れなのである。
きちんと書くと話は膨大になるしこれまで関連記事をかなりの数書いてきたので、最近の情報を加え日本危うしのフレーバーだけをまとめてみる。まず客観情勢から。資料は主として新聞資料のコピペ。
まず日銀の現状を確認しておく。資料に時間差はあるが細かな話ではなくイメージだけなので十分。日本においては国家予算の歳出に対し税収が少ないので政府は赤字国債を発行して資金を調達しており、その残高が約1200兆円に達するのは幸いにして周知の事実となった。それだけの大量の資金はどこにもないので、いわゆる財政ファイナンスにより日本銀行が買い取り、残存国債全体の43%を保有している状態である。本来は世界中の国で財政ファイナンスは避けられているので、コロナ前はどこの国もわずかな国債を保有するに過ぎなかった。


横道にそれるようだが、1200兆円という規模について。国の国債残高を比較する指標としてGNP比が用いられるが、比較の指標であって意味するところは曖昧というか具体的に見えない。その年の税収比にすればもっと実感がわかるはずだ。ということで今年の予算における税収見込み額、65兆円でみると1200兆円という国債残高は、税収をすべて国債の返済に回したとして18.2年分になる。
しかし現実は今年度の予算を見ればわかるとおり国債費より新規国債発行額が上回る。すなわち返済どころか借金を毎年積み増しているような状態。政府はまずプライマリーバランス、つまり新規発行額と国債費が均等になることを目標としているぐらいで、将来的にも毎年税収の1割が国債の償却に回せれば上出来だろう。それでも国債の全面返済に要する期間は180年。現実的には国債残高を抱えても問題はないが、ある程度の金利に対しての存続可能な健全財政のためにはやはり大幅な国債残高の縮小は不可避かつ縮小達成は不可能と断言してよい。

話は戻って日銀の話。日銀の国債保有額は現在500兆円を超えている。国家予算の約5倍。

そこで日銀のバランスシートを再確認。これは昨年の10月の記事からの転用したもので昨年度になるが本質は変わらない。日銀の資産である国債はBS上負債として一部付利されている当座預金に対応している。見かけはBSの規模が異常に肥大している外は問題なさそう。しかし国債の評価は簿価、当座預金分は金利が上昇すれば支払金利が増え膨張する。
また財布である純資産は4.5兆円しかない。すなわち金利上昇による当座預金額が膨れることにより、日銀は簡単に債務超過に陥る状況にある。

16日のBloombergのネット記事。日銀のデータに基づいたブルームバーグの計算によれば、金利が1%上がるだけで日銀は29兆円の含み損を抱えることになるという内容である。

以上の論説を一言でまとめれば、「日銀は政策金利を引き上げることはできない」状況に陥っている、ということである。
(話がそれでも長くなってYCCまでとてもいきそうにないので続きは明日)
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