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2022.09/02 [Fri]
台風11号の予測情報の比較
現在天気予報は日本を含め、解析的なプログラムによるスーパーコンピューターを用いたシミュレーション計算の結果をもって予報が作成されている。解析的なプログラムなので当然ながらプログラムの中身や前提条件値により、計算結果は微妙に異なる。
主要な気象モデル(シミュレーター)は以下の3つ。これまでの運用実績からECMWFの精度が一番高いことが検証されている。気象庁も機種モデルを保有するが精度としては番外。
・ECMWF (European Centre for Medium-Range Weather Forecasts): :ヨーロッパ中期予報センター
・GFS(Global Forecast System):NOAA(アメリカ海洋大気庁)
・ICON :マックス プランク気象研究所とドイツ気象局 (DWD) の共同開発
それらのモデルの予測結果を「Windy.com」というHPが公開している。2時間おきぐらいに任意の時刻の予測結果を見ることができ、地図の拡大縮小も自由。そのECMWFによる台風11号の9月3日23時時点の風の強さをカラースケールで示した予測が下図。3日の深夜に石垣島に最接近するとのご託宣。この時、石垣島が最も暴風に晒されそうだが、計算結果は風速毎秒25メートルほど、台風の中心から東北東に離れた宮古島の方が毎秒35メートルとより強い風に晒されるという結果であった。

他のモデルによる同時刻の計算結果。スーパーコンピューターによるシミュレーション結果だから正しい、というのは大間違いで、プログラムによる差はもちろんのこと、前提条件(正確には境界条件)によってはどのような結果でも得られるぐらい。新型コロナの感染防止対策の一環で、飛沫の飛散状況のシミュレーション画像が示されたが、飛散状況に意味があるかという根本的な疑問はさておいても、計算結果の一例をもってマスクとかアクリル板の効果を印象付けるのはまさに印象操作の最たるものだった。
さてGFSの計算結果。台風11号はむしろ宮古島に最接近しており、毎秒35メートルの暴風域はECMWFと同じく台風の中心の東側。
GFS (米)
ICONでは、やはり宮古島に最接近するが時刻はもう少し早い。一方毎秒35メートルの暴風域は台風の中心を同心円状に取り巻き、他の二つとは明らかに違う予想。
ICON(独)
一方、日本の予測の状況。気象庁のHPには上記のようなわかりやすい図はない。代えてあるのは進路予想図と警戒エリアのマップ。

こんな石垣島の時間別天気予報も。上記のモデルが示す最接近時の3日23時頃の予報は12時間前と同じく、雨で風速は毎秒20メートル以上、というもの。気象庁の公開する情報に緊迫感は全くない。

今日のNHKのニュース。図としては進路予測と風の予測図があった。くわえて、最大風速が毎秒50メートルなどの予測値(?)と注意の呼びかけなど。
NHKニュース
日本気象協会のHPも進路予測と24時間ごとの予想される台風11号の状況しまとめた表。「中心付近の最大風速毎秒50メートル」という表記も雑駁だし、そもそも50メートルになるような予測は上記3モデルとも想定していない。3日9時と4日九時の予想では位置以外内容はほとんど変わらない。そうかもしれないが台風は移動するので、住民にとって重要なのはどの時間帯にどの程度の暴風を警戒すべきかであるはず。台風自体の状況報告で済ますのはいかにも他人事感が満載に感じられてしまう。上記3モデルでは、住民にとって必要な情報が一目瞭然。
日本気象協会
たかが天気予報ながら彼我の公開情報の質の差に、やはり日本が衰退途上国の筆頭となるのも当然かな、とひどく納得した。
主要な気象モデル(シミュレーター)は以下の3つ。これまでの運用実績からECMWFの精度が一番高いことが検証されている。気象庁も機種モデルを保有するが精度としては番外。
・ECMWF (European Centre for Medium-Range Weather Forecasts): :ヨーロッパ中期予報センター
・GFS(Global Forecast System):NOAA(アメリカ海洋大気庁)
・ICON :マックス プランク気象研究所とドイツ気象局 (DWD) の共同開発
それらのモデルの予測結果を「Windy.com」というHPが公開している。2時間おきぐらいに任意の時刻の予測結果を見ることができ、地図の拡大縮小も自由。そのECMWFによる台風11号の9月3日23時時点の風の強さをカラースケールで示した予測が下図。3日の深夜に石垣島に最接近するとのご託宣。この時、石垣島が最も暴風に晒されそうだが、計算結果は風速毎秒25メートルほど、台風の中心から東北東に離れた宮古島の方が毎秒35メートルとより強い風に晒されるという結果であった。

他のモデルによる同時刻の計算結果。スーパーコンピューターによるシミュレーション結果だから正しい、というのは大間違いで、プログラムによる差はもちろんのこと、前提条件(正確には境界条件)によってはどのような結果でも得られるぐらい。新型コロナの感染防止対策の一環で、飛沫の飛散状況のシミュレーション画像が示されたが、飛散状況に意味があるかという根本的な疑問はさておいても、計算結果の一例をもってマスクとかアクリル板の効果を印象付けるのはまさに印象操作の最たるものだった。
さてGFSの計算結果。台風11号はむしろ宮古島に最接近しており、毎秒35メートルの暴風域はECMWFと同じく台風の中心の東側。
GFS (米)

ICONでは、やはり宮古島に最接近するが時刻はもう少し早い。一方毎秒35メートルの暴風域は台風の中心を同心円状に取り巻き、他の二つとは明らかに違う予想。
ICON(独)

一方、日本の予測の状況。気象庁のHPには上記のようなわかりやすい図はない。代えてあるのは進路予想図と警戒エリアのマップ。


こんな石垣島の時間別天気予報も。上記のモデルが示す最接近時の3日23時頃の予報は12時間前と同じく、雨で風速は毎秒20メートル以上、というもの。気象庁の公開する情報に緊迫感は全くない。

今日のNHKのニュース。図としては進路予測と風の予測図があった。くわえて、最大風速が毎秒50メートルなどの予測値(?)と注意の呼びかけなど。
NHKニュース

日本気象協会のHPも進路予測と24時間ごとの予想される台風11号の状況しまとめた表。「中心付近の最大風速毎秒50メートル」という表記も雑駁だし、そもそも50メートルになるような予測は上記3モデルとも想定していない。3日9時と4日九時の予想では位置以外内容はほとんど変わらない。そうかもしれないが台風は移動するので、住民にとって重要なのはどの時間帯にどの程度の暴風を警戒すべきかであるはず。台風自体の状況報告で済ますのはいかにも他人事感が満載に感じられてしまう。上記3モデルでは、住民にとって必要な情報が一目瞭然。
日本気象協会

たかが天気予報ながら彼我の公開情報の質の差に、やはり日本が衰退途上国の筆頭となるのも当然かな、とひどく納得した。
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