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資産所得倍増プランの効果とプロスペクト理論(加筆修正版)

岸田首相が就任して最も目に付いた基本方針が「資産所得倍増プラン」だった。その昔池田勇人が打ち出した「国民所得倍増計画」を彷彿させられて、凄いことを言うなと称賛の眼で眺めた。しかし改めて見ると「資産倍増」ではなく、「資産所得倍増」。資産所得とは金融資産などの資産から生み出される所得、投資に縁のない多数派の人にとっては預貯金からの利息である。1000万円を年1%で運用して10万円の資産所得。どうもケチ臭い話のようで、またこれなら「資産所得倍増プラン」達成を誇ることは容易なレベルであることに気付いた。

実態はそうであれ、しかし方向は良い。政府は「貯蓄から投資へ」の旗を20年間振り続けてきたらしいが、家計の金融資産が投資にまわらなかった。

日本の国民の金融資産は約2000兆円あるらしいが、半分を超える1000兆円以上が現預金として、異常な低利息にもかかわらず銀行などにブタ積みされている。今後想定される更なる円安や輸入物価高騰に伴う物価上昇、国際収支の恒常的赤字などの元凶は政府の莫大な財政赤字と日銀の財政ファイナンス。これも元をただせば回りまわって銀行に国民の莫大な金が眠っているからであって、いわば国民の自業自得。
20220901家計の金融資産 (2)

という現状において、遅ればせながらでも持続可能な「貯蓄から投資へ」の実行プランを立ち上げる方向に向かったという姿勢には拍手。

年末までにまとめる「資産所得倍増プラン」には三つの要素があるらしい。
・少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充=恒久化
・国民の金融リテラシーの向上=金融教育を国家戦略に
・顧客本位の業務運営=受託者責任

マクラだけで十分重くなってしまったが、今回のブログの本論は「貯蓄から投資へ」の肝であるNISAの改革についての判決と,
では何をすべきかの提言。

まず株式市場の現状。資料は示さないが、日本の個人投資家は往時に較べて概ね投資家数も投資金額も大幅に減っている。現在の東証の主たる投資家は外国人というありさま。家計の金融資産の大半が預貯金というデータからも推察できるだろう。金融庁は家計の金融資産が投資にまわらなかったのは「省庁間連携や改革の不十分さによる」と判断しているそうだが、実態はそうではない。現状認識が根本的に間違っているから、NISA改革という実効性の薄い対策が発案され、実行されつつあり。よって真面目な顔をした記事や論説が誌面をにぎわせている。まさに時間と人と金のムダ。

NISAの現況と改革案については今日の日経新聞朝刊にわかりやすくがまとめられていたので拝借。最終のゴールはあくまで国民が「貯蓄から投資へ」パラダイムを変換するすることにより、政府に頼らず豊かで幸せになってもらうことにあるはずだ。。

ではNISA、一言で記せば、投資家が利益を得た場合の減税措置である。例えば100万円の利益=金融所得を得た時の所得税(みなしで20%)が非課税となり、結果として20万円利益が増えることになる。

100万円の利益を得るためにはまとまった金額を投資されねばならない。また投資の結果、損失ではなく利益を得ねばならない。微利息の銀行預金をしていた人に、ある程度まとまった金額を損失リスクのある金融商品の投資しろと言っても、現実には多くの人は投資しない。その現実は20年間の成果を見れば明らかだろう。先にケチな話、と書いたのは10%の利益だと1000万円投資して、所詮20万円得をするというレベルの話だからである。

また改革案では長期の資産形成向け投資信託とある。頻繁である必要はないが、年に数回の売買の繰り返しは対象にならないようだ。これでは上記のようにいくらNISAをいじった所で本質は変わらず、小遣いの増額は可能でも、「資産形成」と呼ぶに値するまとまった金融資産の形成は不可能。資産形成は自己責任でリスクをとり、自分で考えて投資することが不可欠である。

以上簡単に記したように、NISAの改革によりNISA口座開設数はさらに激増し、一部の人にとって「資産所得倍増プラン」は達成されるだろう。しかし「貯蓄から投資へ」の価値観の変更には寄与しないし、まして国民のまともな資産形成には役立たない。
20220903NISA.png

では、どのようにして預貯金式しかしたことのない人々に、投資活動の価値を知らしめるか?

その前に心理学の基礎知識。投資活動において、人の心は、利益を得れば喜びを得、損失をこうむれば苦痛を感じる。面白いことに、利益をいくら得ても喜びはそれほど増加しないが、わずかでも損失をこうむれば暗い気分になる。これがプロスペクト理論。

筆者は入社2年目の春に初めて株式投資をして2万6000円の利益を得た。妻になる人にも薦め、彼女も1万某かの利益を得た。幸い二人とも幸先がよく、以降いろいろと大波も小波もあったが現在も投資活動を続けている。最初の成功体験が契機となったのだ。

彼女は、それゆえ友達にも株式投資を薦めた。はまった人もいればダメな人もいた。ダメな理由は、株価というのは上昇下落を日々繰り返すものなので、下がった時には心配で夜も眠れなくなるから、だそうだ。たぶん損に敏感な人の方が多数派だろう。

1000兆円もの金が預貯金に眠るのも原因は同じ、少額でも損失に対する怯えあれば頭ではわかっていても投資する気にならない。それゆえ投資経験のない人々を「貯蓄から投資へ」導くためには、初期投資の心理的な壁、すなわち投資して損をこうむったらどうしよう、怖い、という心理から解放してあげなくては、「貯蓄から投資へ」の流れは生じない。一度、もしくは複数回の成功体験があれば、人間はまた欲の生き物でもあるので投資金額は膨らんでいき、「貯蓄から投資へ」は坂道を転がる石のように加速していく。

それゆえ、「国民の金融リテラシーの向上=金融教育を国家戦略に」ということなのだが、時間がかかりすぎ、現在の1000兆円の保有者に対して効果はない。

では人生初めて株式投資をする人たちを、どのようにして投資による損失に対する恐れや苦痛から解放するのか、そんなことが可能なのか?

答はイエス、可能である。

例えば人生初めて株式投資をする人、もしくは過去5年以上投資活動から離れていた人が投資をする場合、確定した損失をある金額(例えば20万円、NISAによる非課税額総額と同規模であれば異論はないだろう)まで、所得税の税額控除をする、だけでよい。

その際証券会社のアシストは不可欠だが献身的に協力してくれるはずだ、大幅な解説口座増になるのだから。少々の実務的技術的ハードルはあるだろうが、前向きに検討すれば解決可能。少なくとも、NISA改革にくらべ桁違いの預貯金が投資に回り、全員とは言わないまでも多くの国民が年金に頼らない豊かな生活を享受できるようになるだろう、アメリカ人のように。

20220903プロスペクト理論2



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