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黒田日銀総裁の本心

黒田総裁は相当明晰かつ肝の据わった方とお見受けする。多分以上のことは百も承知。黒田総裁の本心は、諸外国の日本に対する財政ファイナンス疑惑を醸成し、円の暴落と輸入インフレをもって日本の膨大な財政赤字を実質的に返済可能なレベルまで引き下げることにある、とずっと見ているのだがどうだろう。

この一節、まるで昨日にでも記されたように見えるが、6年半ほど前の2016年2月7日のブログの最後に記したものである。この時までに100件を超える経済記事を書いてきた中の一つであり、政府と日銀のコラボであるアベノミクスの主役である日銀の異次元の量的金融緩和ついて記した記事のひとつ。先日引用した2014年9月の記述にあるように、口先だけの評論家と違い身銭を切って投資も実践しているので、背景の中身も濃い。

2014年9月の記事から:実は為替相場に親しい。少々前に外銀に口座を開き、その後外貨持ち高を増やし、現在、金融資産の1/3は米ドルと豪ドル建て。だから他人事の評論家の感想と違い、少々記しても良いだろう。


さて昨日、数少ない金融経済の専門家として敬意を覚える藤巻健史氏がご自身のブログにこう記していた。
安倍前総理の経済政策には当初から大反対だし、経済に関しては大変な失政だと思っている。総理といえども万能ではないから、ブレインの選択が重要だが、そこを間違えた。財政・金融のブレインは財務省・日銀で本流を歩いてきた人の中から選べばよかった。本流を歩いてきた人は、本来の財政論・金融論に精通しているからだ。精通していたからこそ偉くなっているはずだ。アベノミクスのような本来の財政論・金融論から途方もなくかけ離れたトンデモ理論(=財政ファイナンスの実行等)など行われなかったはずだ。

アベノミクスは多様な側面があり功罪併せ持つ。健全財政が最大の信条である藤巻氏から見れば「当初から大反対」は当然のコメント。冒頭に引用した一節は、私から見た実態が見え始めた異次元量的金融緩和に対する評価の帰結であり、藤巻氏の論旨と共通している。間違えた政策ブレーンとは浜田宏一東京大学・イェール大学名誉教授。量的記入緩和により物価上昇は2%を超え日本経済は軌道回復の道をたどるはずであったが、結局物価上昇は上昇することなく、経済の回復は机上の泡と消えた。結果政府債務は国内総生産(GDP)の2.5倍に拡大し、返済不能にまで財政赤字は不可逆的に積みあがった。日銀には実質的な財政ファイナンスにより国債の半分を日銀が保有する異常事態に陥り、QT不能な水準にまで膨張したバランスシートが残されたというのが現状である。

それを推進したのが黒田総裁である。黒田総裁、直接は存じ上げるわけではないが、発言内容を見る限り相当優秀な方である。しかも財務省出身、国の財政状態と将来について最も熟知日本人の一人であることに疑いはない。さらにその胆力からみてもはや日本の財政状況に破綻回避の道筋はないことを認識していたと思われる。彼にとって総裁就任は天の恵み、日本を救うことが出来るのは今の自分しかないと確信したに違いない。冒頭に書いた円安と物価高騰によるインフレによる債務の実質的な大規模削減である。

立場上、いくらそう思ったとしても口に出すわけにはいかない。きわめて頭の良い人だから、官邸すなわち浜田の理論に乗って財政赤字の拡大を支え、金融システム維持のために国債や株式などを日銀に買い入れさせたのである。

以上はあくまで想定であり、根拠はなかった。

しかし今年後半になって一部の人は気づき始めた。その一つが8月21日の日経新聞一面トップに掲載された「インフレ税」米欧4.5兆ドル 債務圧縮、財政に劇薬」という特集記事である。他人事のような書きぶりだが、記者はインフレが100%になれば債務は実質半減、300%になれば四分の1になるということを示している。これに対し、私の知る限り為替の世界もネット上のコメントも何も反応はなかった。

なお、上述の藤巻健史氏は以前よりやがて日銀の信認がほころんだ時、ハイパーインフレが訪れると連日HPで記している。

また日米の金利差に起因する歴史的円安が進行する中、黒田総裁は大規模な記入緩和を維持すると強く表明している。日銀の現状において、なす術がないことを熟知しているだけでなく、彼の本心がインフレによる財政赤字の解消にあるとすればなぜ理由にならぬ理屈をつけて現状維持を貫くのもわかる。

参考までに22日の金融政策決定会合の後の「総裁記者会見要旨」から超一部の抜粋。
(問) 安倍総理と共にアベノミクスで金融緩和を進めた結果、10 年経つと円の価値は半減して、行き過ぎた円安で輸入物価高、国民生活は厳しくなってきました。これは明らかな失敗ではないかと思うのですが、その認識はあるのでしょうか。
(答) ありません。
(問) これだけ国民生活が苦しんでいるのに、全く責任を感じていないのかと。過去に古今東西、自国の通貨を半減させて評価されるケースというのはあるのでしょうか。
(答) 半減させていませんし、(中略)。その中で様々な状況があったことは事実であり、2%をまだ安定的・持続的に達成できてないということは非常に残念ですが、ご指摘のような問題があるとは思っていません。


さてそのインフレの痛みは、現在のガソリンがとかマックが10円上がるとの比ではない。なぜ黒田総裁は世界中が必至で抑えようとしているインフレを目指すのか?

ゴールは財政赤字の実質な劇的レベルの削減にある。この30年間、政府は赤字国債の発行による財政措置で景気を維持してきた。経済成長が伴えばそれも救われるが見ての通り先進国一の低成長というか未成長。ではばらまかれた国家予算はどうなったかというと、国民の金融資産の増加、すなわち預貯金に回っただけだった。

それは誰の?というと今の高齢者、60代以上が大半を所有する。その負債部分を負担するのがその子供たちや孫たち。

経済成長や増税、予算縮小で不可逆的レベルに達した財政赤字は削減できない。黒田総裁はこの機に劇薬を投与、これまでの赤字国債によるフリーランチを享受してきた世代にはツケを払ってもらい、次世代には明るい未来を約束したい、これが本心だと思われる。凡人に天才の考えていることは理解できない。

次期日銀総裁としては日銀出身の雨宮氏・中曽氏が候補にあがっているという。お二人とも黒田氏と同じく相当優秀な方の上、黒田総裁の下で副総裁を務められている。できることも考えていることも同じかもしれない。その中曾氏のインタビューきじが朝日新聞に掲載されたそうで、藤巻氏が紹介していた。

「(原編集委員) それはいずれ国民が負担することになるのですか(中曾氏)そうです。日本でも今後物価の上昇圧力がさらに増せば、日銀は国民から嫌がられてもどこかで利上げしなければいけなくなる。(略)最終的にはこれを増税あるいは歳出削減で穴埋めしなければいけません。たとえそうせずにインフレを放置したとしても国民は物価上昇を通じて結局は負担することになります」

やはり金融が分かっているから、方向性は私と同じだ。私は「累積されたリスク」の結果が「日銀債務超過&円の紙くず化」だと思っているし、「中曾さんは、お立場上、そこまでは言えない」のだろうと私は思っている。


最後に日本で起きた実際の出来事を再掲しておく。2年ほど前の10月24日に記した「日本の不都合な未来(2)」という記事の中に掲載した図である→こちら

下図はやはり財務省HPの資料から。戦費調達のため戦時中は現在のように国債の増発を続け、終戦時には債務残高がGDP比で現在の国債残高レベルに達していた。戦争が終わり、需要爆発が起きたこともあって、ハイパーインフレが発生した。注目すべきことに、財務省自らが図中に「ハイパーインフレーション発生、預金封鎖、新円切替、等による債務調整」と記している。戦争が終わり、需要爆発が起きたこともあって、ハイパーインフレが発生したらしい。

その結果、図にあるように翌年の債務残高はGDP比60%に減少、その後GDPの増加とインフレもあってか昭和40年代には10%程度までに健全化している。


20201024金融緊急令




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