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2022.11/30 [Wed]
円高の行方・続
他紙がどのような記事を書いたのか書かないのか知らないが、概要は見出しの通りでインパクトの大きなニュース。
11月29日日経朝刊2面から
見出しの割に熱の入った長い記事なので、以下記事の中核だけをピックアップしておく。書かれている内容はすべて真実。
・日銀が28日発表した4~9月期決算で、保有国債の時価評価が2013年の異次元緩和導入後で初めて簿価を下回り、含み損に転落した。米欧の利上げをきっかけに、日本でも金利上昇(債券価格は下落)が進んだためだ。
・日銀の保有国債で含み損が生じるのは、量的緩和を解除した06年3月末以来、16年半ぶり。含み損の規模は現行の会計制度が始まった1998年以降で最大となる。
・9月末時点の簿価は545兆5211億円、時価は544兆6462億円だった。差額の8749億円が含み損となる。3月末時点では4兆3734億円の含み益だったが、半年で全額が吹き飛んだ。
・長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは3月末時点で0.21%だったが、9月末には日銀が上限とする0.25%近くまで上昇した。日銀が長短金利操作の直接の対象としない20年金利は0.3%程度上がって1%に達し、30年金利も0.5%近く上昇し、1.4%程度となった。超長期金利は足元でさらに上昇しており、含み損も拡大しているとみられる。
・日銀は13年4月に始めた異次元緩和で国債を大量に購入して市場に資金を流し込んできた。現在は長期金利を上限の0.25%に抑え込むため、国債を無制限に買い入れている。やがて日銀が政策修正に追い込まれるとの思惑もあってヘッジファンドなどが国債売りに動き、日銀の購入額が膨らんでいる。QUICKによると、日銀は発行済み長期国債の51.2%を保有している。
・超低金利下で国債購入を膨らませたため、日銀保有の国債の運用利回りは0.221%と極めて低い水準にある。本格的な利上げ局面を迎えれば、含み損が膨らんでいくことは避けられない。野村証券の中島武信氏によると、金利全体が0.4%上昇すれば、国債の含み損が自己資本を上回り、日銀も実質的な債務超過に陥るという。
・日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、時価が下落しても収益が悪化することはない。ただ、含み損が拡大するにつれ、市場が日銀の財務状況に不安を感じ始めれば金利や為替などにも影響が及ぶ可能性がある。
債務超過というのは民間でいえば破産の要件。負債返済の見通しが立たなければ即会社更生法申請となる。日銀にBSにおいて本来保有すべきではない国債が資産の大部分を占めている。政府が税収増で国債を償還できれば問題はないが、現実は経済成長等による税収の自然増での償還ができないので、長期間赤字国債を発行、それを日銀が買い取っているねずみ講も恥じらうような状況にある。大規模な増税を実施すれば財政再建は可能だが、国民生活や日本経済は委縮しては惨憺たる状況になるだろう。
さて今回の記事の本題の保有国債の含み損に戻る。(藤巻健史氏のブログに適切な解説かあったので丸ごと借用)2022年3月末の10年債利回は0.210%、9月末は0.245%である。たった0,035%の上昇で日銀の保有国債の評価額は+4兆3734兆円から△8740億円に下落した。すなわち0.035%の金利上昇で5兆2474億円の下落。単純算数で計算すると、0.35%長期金利が上昇すると52兆4740円の評価額が下落することになる。
円安に対して日本も金利を上げろという声が一部にはあるようだ。円安の要因である金利差を縮小すれば円安を止めることができるという小学生のような発想。しかし、金利を上げれば国債価格は暴落する。国債の時価が暴落すれば日銀は即債務超過に陥る状態にあるのが実態。上記引用した日経の記事の最後の一節、「為替に対する影響」とは円の暴落を意味する。円安を防ぐに有効なだけの金利を上げれば、10倍返しの円の暴落に陥る可能性が高いというのがその含み。記者としてはそうはっきりと書けなかっただけのこと。
要するに日銀は、できても0.25%程度の利上げしかできず、瞬時の効果はあっても本質的な金利差を埋めることはできない。すなわち金利差に起因する円安の要素は少なくとも来春までは増加し続ける。その実態を実績で示したのが日経新聞のニュースだった。
以上の背景は6月23日に書いた「日本沈没の危機(1)(2)」をご参照のほど→こちら。
参考までに日銀発表の資料から。


見出しの割に熱の入った長い記事なので、以下記事の中核だけをピックアップしておく。書かれている内容はすべて真実。
・日銀が28日発表した4~9月期決算で、保有国債の時価評価が2013年の異次元緩和導入後で初めて簿価を下回り、含み損に転落した。米欧の利上げをきっかけに、日本でも金利上昇(債券価格は下落)が進んだためだ。
・日銀の保有国債で含み損が生じるのは、量的緩和を解除した06年3月末以来、16年半ぶり。含み損の規模は現行の会計制度が始まった1998年以降で最大となる。
・9月末時点の簿価は545兆5211億円、時価は544兆6462億円だった。差額の8749億円が含み損となる。3月末時点では4兆3734億円の含み益だったが、半年で全額が吹き飛んだ。
・長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは3月末時点で0.21%だったが、9月末には日銀が上限とする0.25%近くまで上昇した。日銀が長短金利操作の直接の対象としない20年金利は0.3%程度上がって1%に達し、30年金利も0.5%近く上昇し、1.4%程度となった。超長期金利は足元でさらに上昇しており、含み損も拡大しているとみられる。
・日銀は13年4月に始めた異次元緩和で国債を大量に購入して市場に資金を流し込んできた。現在は長期金利を上限の0.25%に抑え込むため、国債を無制限に買い入れている。やがて日銀が政策修正に追い込まれるとの思惑もあってヘッジファンドなどが国債売りに動き、日銀の購入額が膨らんでいる。QUICKによると、日銀は発行済み長期国債の51.2%を保有している。
・超低金利下で国債購入を膨らませたため、日銀保有の国債の運用利回りは0.221%と極めて低い水準にある。本格的な利上げ局面を迎えれば、含み損が膨らんでいくことは避けられない。野村証券の中島武信氏によると、金利全体が0.4%上昇すれば、国債の含み損が自己資本を上回り、日銀も実質的な債務超過に陥るという。
・日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、時価が下落しても収益が悪化することはない。ただ、含み損が拡大するにつれ、市場が日銀の財務状況に不安を感じ始めれば金利や為替などにも影響が及ぶ可能性がある。
債務超過というのは民間でいえば破産の要件。負債返済の見通しが立たなければ即会社更生法申請となる。日銀にBSにおいて本来保有すべきではない国債が資産の大部分を占めている。政府が税収増で国債を償還できれば問題はないが、現実は経済成長等による税収の自然増での償還ができないので、長期間赤字国債を発行、それを日銀が買い取っているねずみ講も恥じらうような状況にある。大規模な増税を実施すれば財政再建は可能だが、国民生活や日本経済は委縮しては惨憺たる状況になるだろう。
さて今回の記事の本題の保有国債の含み損に戻る。(藤巻健史氏のブログに適切な解説かあったので丸ごと借用)2022年3月末の10年債利回は0.210%、9月末は0.245%である。たった0,035%の上昇で日銀の保有国債の評価額は+4兆3734兆円から△8740億円に下落した。すなわち0.035%の金利上昇で5兆2474億円の下落。単純算数で計算すると、0.35%長期金利が上昇すると52兆4740円の評価額が下落することになる。
円安に対して日本も金利を上げろという声が一部にはあるようだ。円安の要因である金利差を縮小すれば円安を止めることができるという小学生のような発想。しかし、金利を上げれば国債価格は暴落する。国債の時価が暴落すれば日銀は即債務超過に陥る状態にあるのが実態。上記引用した日経の記事の最後の一節、「為替に対する影響」とは円の暴落を意味する。円安を防ぐに有効なだけの金利を上げれば、10倍返しの円の暴落に陥る可能性が高いというのがその含み。記者としてはそうはっきりと書けなかっただけのこと。
要するに日銀は、できても0.25%程度の利上げしかできず、瞬時の効果はあっても本質的な金利差を埋めることはできない。すなわち金利差に起因する円安の要素は少なくとも来春までは増加し続ける。その実態を実績で示したのが日経新聞のニュースだった。
以上の背景は6月23日に書いた「日本沈没の危機(1)(2)」をご参照のほど→こちら。
参考までに日銀発表の資料から。

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