Entries
2023.02/28 [Tue]
藤井五冠の強運
先週は藤井聡太五冠の大きな対局が3局あり、まるで藤井ウィークの様相だった。特に王将戦第5局、羽生善治という現在は無冠だが将棋界において有史以来の大天才とのタイトル戦、世の関心が多少集まるのもわかるが、第5局とは途中経過にすぎない。プロ野球で言えばペナントレースの夏の一試合の結果のようなもの、それが日経新聞の社会面にも写真付きの記事が掲載されるほどだから、大谷翔平並に国民的アイドル(?)化しているのかもしれない。
2月27日朝刊
この将棋、超天才の対決だけに見どころ満載なのだが、将棋に親しくない人にとっては残念ながら楽しめないと思うので詳細はパスするが、雰囲気だけ書き留めておく。ソースは毎日新聞の王将戦中継サイト、詳しい内容は同紙の観戦記事をどうぞ。
王将戦中継サイトにはプロ棋士二人の解説やコメントも掲載される。時は63手目、先手の藤井が羽生陣内の8三に飛車を成りこんだ局面。記事にこうある「西川六段と里見女流五冠が『こんなことあるんですか』と口をそろえる。西川六段は『すごい、基本的に当たらないですね』と感嘆のため息」。
「こんなこと」の局面がこれ、羽生の桂馬が跳ねて藤井の放れ駒の金をタダで取った上に王手をかけた瞬間。これに対する記事のコメントが「これを承知で踏み込んでいるのだから恐ろしい」。

以上はマクラ、その数日前ノ23日に朝日杯将棋オープン戦の準決勝、決勝が行われた。その結果、藤井聡太が優勝。これだけなら今やニュースの価値はないぐらい。
オープンとなっているゆえんは全棋士に加え、アマチュア10人、女流棋士3人も参加するトーナメント形式である。まさに将棋界の頂点を決める棋戦である。ただし、持ち時間は40分と短く持ち時間を使い切った後は1手1分未満で指す。一手に1時間を超える長考が珍しくない将棋において、考慮時間が短く優勝するためには自己責任とはいえ多少の運の要素も加わる。
一次、二次予選を終え本戦に残った16名の組み合わせと結果が右図。

瞠目すべき一戦が準決勝の藤井‐豊島(とよしま)戦。この一局、163手という長手数、たぶん1分将棋が長手数続いたことだろう。ちなみに豊島九段というのは一般には知られていないかもしれないが、若くして竜王、名人など6タイトルを獲得した強豪である。

さて、その準決勝の153手目の局面、ネット上のダイジェスト動画から。先手すなわち下が藤井、上が豊島、豊島が馬を引き藤井の逃げ回っている玉に王手をかけ、藤井が逃げたところである。
この時点でAIの評価は左の黄色の枠線にあるように、先手の勝つ可能性は0パーセント、すなわちこの瞬間に詰みがある。この局面で藤井の玉を詰ませることができたらあなたはプロ並み、藤井は当然詰みを読めているわけだが、投了せずに逃げた。豊島が間違えることを期待したわけではないだろうから、投げ場づくりだったのか、投了宣言の前に手が動いてしまったのか。

ここで豊島が間違えた。正解は6六飛車のタダ捨て。この瞬間に左下にあるように先手の勝率は90%に大逆転。平時であれば、豊島なら一瞬にして詰みが見えたはず。長時間の緊張に間が差したというか、天が藤井に味方をしたというか・・・。藤井聡太、単に強いだけでなくとてつもない強運も持ち合わせているらしい。

2月27日朝刊

この将棋、超天才の対決だけに見どころ満載なのだが、将棋に親しくない人にとっては残念ながら楽しめないと思うので詳細はパスするが、雰囲気だけ書き留めておく。ソースは毎日新聞の王将戦中継サイト、詳しい内容は同紙の観戦記事をどうぞ。
王将戦中継サイトにはプロ棋士二人の解説やコメントも掲載される。時は63手目、先手の藤井が羽生陣内の8三に飛車を成りこんだ局面。記事にこうある「西川六段と里見女流五冠が『こんなことあるんですか』と口をそろえる。西川六段は『すごい、基本的に当たらないですね』と感嘆のため息」。
「こんなこと」の局面がこれ、羽生の桂馬が跳ねて藤井の放れ駒の金をタダで取った上に王手をかけた瞬間。これに対する記事のコメントが「これを承知で踏み込んでいるのだから恐ろしい」。

以上はマクラ、その数日前ノ23日に朝日杯将棋オープン戦の準決勝、決勝が行われた。その結果、藤井聡太が優勝。これだけなら今やニュースの価値はないぐらい。
オープンとなっているゆえんは全棋士に加え、アマチュア10人、女流棋士3人も参加するトーナメント形式である。まさに将棋界の頂点を決める棋戦である。ただし、持ち時間は40分と短く持ち時間を使い切った後は1手1分未満で指す。一手に1時間を超える長考が珍しくない将棋において、考慮時間が短く優勝するためには自己責任とはいえ多少の運の要素も加わる。
一次、二次予選を終え本戦に残った16名の組み合わせと結果が右図。

瞠目すべき一戦が準決勝の藤井‐豊島(とよしま)戦。この一局、163手という長手数、たぶん1分将棋が長手数続いたことだろう。ちなみに豊島九段というのは一般には知られていないかもしれないが、若くして竜王、名人など6タイトルを獲得した強豪である。

さて、その準決勝の153手目の局面、ネット上のダイジェスト動画から。先手すなわち下が藤井、上が豊島、豊島が馬を引き藤井の逃げ回っている玉に王手をかけ、藤井が逃げたところである。
この時点でAIの評価は左の黄色の枠線にあるように、先手の勝つ可能性は0パーセント、すなわちこの瞬間に詰みがある。この局面で藤井の玉を詰ませることができたらあなたはプロ並み、藤井は当然詰みを読めているわけだが、投了せずに逃げた。豊島が間違えることを期待したわけではないだろうから、投げ場づくりだったのか、投了宣言の前に手が動いてしまったのか。

ここで豊島が間違えた。正解は6六飛車のタダ捨て。この瞬間に左下にあるように先手の勝率は90%に大逆転。平時であれば、豊島なら一瞬にして詰みが見えたはず。長時間の緊張に間が差したというか、天が藤井に味方をしたというか・・・。藤井聡太、単に強いだけでなくとてつもない強運も持ち合わせているらしい。

- 関連記事
スポンサーサイト
*Comment
Comment_form