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2023.03/08 [Wed]
原油生産量の将来
温暖化防止や脱炭素化とかの世界的潮流のなかで、石油開発の大手企業は石油開発から手を引き、まず探鉱投資が大幅に削減されるものと思っていた。探鉱投資はあからさまに脱炭素化に逆行する行為であり、探鉱の成功の確率は低く、かつメキシコ湾油田の大火災事故のようにリスクも大きい。探鉱活動が低迷すれば新たな油ガス田の発見は期待できない。すなわち、原油の供給は減少する一方だと思っていた。
ところがこんな記事が先日掲載されていて何か勘違いがあるらしいことに気が付いた。
2月13日 日経新聞朝刊
世界各地で大規模な油田が相次ぎ見つかっている。英調査会社ウッドマッケンジーが発表したリポートによると、2022年に発見された新規油田、ガス田の価値は合計で330億ドル(約4兆3千億円)規模に達することがわかった。
ウッドマッケンジーによると、最も価値が高かったのはナミビアの深海油田だ。英シェルが22年、ナミビアで初となる油井掘削をカタール石油と共同で行った。アルジェリアやブラジルでも大規模な油田が発見された。国営石油会社と欧米の石油メジャーが油田や天然ガス田の探査をけん引する。22年には仏トタルエナジーズ、カタールエナジー、ブラジル国営石油ペトロブラスが新たな大規模油田を発見した。
この事実の背景を説明するかのような記事が、日経新聞に先日あらためて掲載されていた。

世界のエネルギーは脱炭素化が加速するのか、それとも化石燃料が主役の時代が続くのか。まだ未来は見えてこない。石油メジャーも将来の不確かさから石油やガスの生産を大幅に引き上げられないでいる。問題は、化石燃料中心の未来が実現した場合、現状の開発規模では供給不足に陥り、高値が定着しかねないことだ。
(コモディティーエディター浜美佐)の署名があり、石油開発の専門家ではなさそうなので記事の主旨は割愛して、添付図がなかなか価値ある現実を語っているのでその感想文を記す。
図は世界の石油開発企業をメジャー5社とその他の二つに分け、その上流投資額の推移を示したもの。残念ながら開発投資と探鉱投資の区別はない。
投資総額そのものは油価に連動して推移するが、脱炭素化と新型コロナの影響で2020年に大きく減少した。2020年、メジャーを含む大手企業が一斉に上流部門の縮小を図った。確かにその通りではあるが、大部分を放棄したわけではなく、当然ながら優良資産は保有し、それ以外をその他に分類される大手以下の独立系石油会社に売却したことが図から明らかになった。今年、メジャー企業が記録的な巨大利益を上げたのは、油価の高騰と重要な資産を保有し石油の増産を図ってきたためである。
その他の企業の上流部門の投資額は油価の低迷していた2016年を凌駕しており、石油開発が絶滅危惧種になっているわけではない。エネルギーの専門家の集団である石油開発企業から見れば、温暖化防止策や再生可能エネルギーなど、おままごととは言わないが、一部の人間の利権に群がる蟻のように思われるのだろう。

とはいえ、全体から見ればやはり探鉱投資の規模は縮小するだろうから、今後の石油の供給規模に影響があるのは確か。すなわち、多少の波はあるとはいえトレンドとしての油価の高騰は避けられないだろう。
下図はアメリカのリグの稼働数の5年間の推移。リグとは石油やガスの生産井を掘削する機器のこと。アメリカのリグの大部分はシェールオイルやシェールガスの井戸の掘削に用いられている。2018年の油価のセミピークからの低迷に伴い、ピークの900リグから650リグまで減少していたが、新型コロナの影響による油価の大暴落で激減した。その後回復したとはいえ600リグレベル。足元ではまた減少傾向が見て取れる。
ピークに較べての減少分は質の悪い、すなわち生産性が低かったり埋蔵量の小さいシェールへの掘削が放棄されているから。またシェールが大規模に開発されるようになって10数年が経過している。有望なシェールはすでに開発されつくしている可能性が大きい。
さて、シェールからの生産量は初期減退は極めて大きいがその後は数十年にわたって穏やかな減退、言い換えると大きな生産量の減退はない。よって、世界一の原油生産国アメリカの生産量も今がピーク、大きな減退はなくとも減産傾向はまぬかれない。

と、ここまで論考を進めると、グローバルに見て石油開発投資がドラスティックに縮小することはないが(すると思っていた)、近い将来、原油の生産量は需要量を下回ることになる、というのが結論。もちろん油価は反比例する。
ところがこんな記事が先日掲載されていて何か勘違いがあるらしいことに気が付いた。
2月13日 日経新聞朝刊

世界各地で大規模な油田が相次ぎ見つかっている。英調査会社ウッドマッケンジーが発表したリポートによると、2022年に発見された新規油田、ガス田の価値は合計で330億ドル(約4兆3千億円)規模に達することがわかった。
ウッドマッケンジーによると、最も価値が高かったのはナミビアの深海油田だ。英シェルが22年、ナミビアで初となる油井掘削をカタール石油と共同で行った。アルジェリアやブラジルでも大規模な油田が発見された。国営石油会社と欧米の石油メジャーが油田や天然ガス田の探査をけん引する。22年には仏トタルエナジーズ、カタールエナジー、ブラジル国営石油ペトロブラスが新たな大規模油田を発見した。
この事実の背景を説明するかのような記事が、日経新聞に先日あらためて掲載されていた。

世界のエネルギーは脱炭素化が加速するのか、それとも化石燃料が主役の時代が続くのか。まだ未来は見えてこない。石油メジャーも将来の不確かさから石油やガスの生産を大幅に引き上げられないでいる。問題は、化石燃料中心の未来が実現した場合、現状の開発規模では供給不足に陥り、高値が定着しかねないことだ。
(コモディティーエディター浜美佐)の署名があり、石油開発の専門家ではなさそうなので記事の主旨は割愛して、添付図がなかなか価値ある現実を語っているのでその感想文を記す。
図は世界の石油開発企業をメジャー5社とその他の二つに分け、その上流投資額の推移を示したもの。残念ながら開発投資と探鉱投資の区別はない。
投資総額そのものは油価に連動して推移するが、脱炭素化と新型コロナの影響で2020年に大きく減少した。2020年、メジャーを含む大手企業が一斉に上流部門の縮小を図った。確かにその通りではあるが、大部分を放棄したわけではなく、当然ながら優良資産は保有し、それ以外をその他に分類される大手以下の独立系石油会社に売却したことが図から明らかになった。今年、メジャー企業が記録的な巨大利益を上げたのは、油価の高騰と重要な資産を保有し石油の増産を図ってきたためである。
その他の企業の上流部門の投資額は油価の低迷していた2016年を凌駕しており、石油開発が絶滅危惧種になっているわけではない。エネルギーの専門家の集団である石油開発企業から見れば、温暖化防止策や再生可能エネルギーなど、おままごととは言わないが、一部の人間の利権に群がる蟻のように思われるのだろう。

とはいえ、全体から見ればやはり探鉱投資の規模は縮小するだろうから、今後の石油の供給規模に影響があるのは確か。すなわち、多少の波はあるとはいえトレンドとしての油価の高騰は避けられないだろう。
下図はアメリカのリグの稼働数の5年間の推移。リグとは石油やガスの生産井を掘削する機器のこと。アメリカのリグの大部分はシェールオイルやシェールガスの井戸の掘削に用いられている。2018年の油価のセミピークからの低迷に伴い、ピークの900リグから650リグまで減少していたが、新型コロナの影響による油価の大暴落で激減した。その後回復したとはいえ600リグレベル。足元ではまた減少傾向が見て取れる。
ピークに較べての減少分は質の悪い、すなわち生産性が低かったり埋蔵量の小さいシェールへの掘削が放棄されているから。またシェールが大規模に開発されるようになって10数年が経過している。有望なシェールはすでに開発されつくしている可能性が大きい。
さて、シェールからの生産量は初期減退は極めて大きいがその後は数十年にわたって穏やかな減退、言い換えると大きな生産量の減退はない。よって、世界一の原油生産国アメリカの生産量も今がピーク、大きな減退はなくとも減産傾向はまぬかれない。

と、ここまで論考を進めると、グローバルに見て石油開発投資がドラスティックに縮小することはないが(すると思っていた)、近い将来、原油の生産量は需要量を下回ることになる、というのが結論。もちろん油価は反比例する。
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