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風の行方とハードボイルドワンダーランド

再雇用の機会を捨て自由な時と空間を・・・ 人は何のために生まれてきたのだろうか? これから本当の旅がはじまる・・・

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「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の本質

村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」をアマゾンで購入、先日読み終えた。村上春樹の前の訳者は「ライ麦畑でつかまえて」とタイトルを訳していたのでその方が多くの人にとっては分かりやすいだろう。帯を外せば(届いた本に帯はなかった)真っ白な本に真っ赤なアルファベット、どうみても70代のおじいさんが読む本の体裁ではないよな、と思いつつ電車やバスの中で開いていた。きっとヘンな爺さん、と見られていたに違いない。

購入のいきさつは→こちら
送料込み1500円 20240415キャッチャーインザライ

本の概要、内容についてではなくその外側、について記しておく。記述はNHKの番組紹介から。ただし「暴力的な描写や不道徳な表現から」との解説部分は番組のプロヂューサーかディレクターの個人的見解だろう;
J.D.サリンジャー著「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。世界30ヵ国語に翻訳され発行部数8000万部以上を誇る青春小説の金字塔。一方で、暴力的な描写や不道徳な表現から全米で禁書処分が多発。さらにジョン・レノン殺害の犯人が本に影響を受けたと告白した。

先日のブログに記した筆者の補足;
原作は戦後間もない1951年に発刊されている。しかし上の紹介にあるように1953年から禁書運動が長年アメリカで続いたそうで、最後の州の禁書リストから削除されたのは2006年だったという。

本書は高校生のホールデンが、クリスマス休暇前の土曜日から月曜日までの三日間の自分の行動や見たこと、それらに繋がる数々の回想などを会話形式も多用して、一人称で饒舌に語りついでゆくという形式をとっている。さらにそこに自分の感情や価値観、美意識が重ねられていく。劇的な出来事もなくあらすじと言うほどのものさえないと言って良いだろう。5ページから351ページまでの文字と三日間という時間を使って描かれるのは、異常なまでに詳細なホールデンという高校生の魂の姿であった。

初読は大学一年生の時。英語の授業のテキストとして使われたので原書を読んだ。印象はかすかに残っているがあらすじは全く覚えていないのはあらすじというものがないためだったようだ。

サリンジャーが350ページを使って描き出したホールデンの姿をいくつかの単語で代表させることは乱暴であるが、通奏低音のように流れるテーマは、ホールデンにとっての自分の外の世界が「phony」(村上春樹はインチキと訳出)で満ちているということだった。言いかえれば彼のまわりは虚飾と欺瞞にまみれ、彼の価値観にとっては吐き気のするような人間ばかり、ゆえに彼の住める世界は社会に存在しなかった。唯一、心の安住を得られる存在は小学四年生の妹のフィービーだけであった。

ホールデンの言う「phony」な世界についていくつか引用しておく;
・(学校について)なにしろインチキ野郎の巣窟みたいなところでさ、(中略)いつの日かろくでもないキャデラックを買えるくらいの切れ者になるべく、せっせと勉強に励むことだけ。(中略)そして誰も彼もがちっぽけで陰険な派閥みたいのを作って、身内でかたまりあっている。

・(劇場のクリスマスのに出し物について)これはものすごく宗教的で、美しいことだとみなされるわけだ。(中略、僕にはそう思えないと言った後)だってさ、ちょっと考えれば連中がステージを終えて、ああやっと終わった、みたいな感じで煙草をぷかぷか吹かしたりすることは、見え見えなわけじゃないか。

・(映画館の回想、となりの女が映画を観て泣きまくっていたが、彼女には子供がいて便所に行きたいと言っているにもかかわらず、そこに座っておとなしくしてなさいと繰り返した話の後)インチキ臭い映画を観ておいおい泣いているやつなんて、十中八九まで実は根性曲がりのカスなんだ。

・(弁護士に関する認識)弁護士がいつもいつも無実の人間を生命を救ってまわって、しかもやりたくて、そいうことをやっているなら悪くないんだよ。でもさ、現実に弁護士になったらさ、(中略)しこたまお金を稼いで、ゴルフをして、ブリッジをして、車を買って、マティーニを飲んで、大物づらすることに手一杯なんだ。(中略、実際に無実の人間を救っても)ほんとにその人を救いたいのか、それともすげえ弁護士だとみんなに思われたくてやっていることなのか・・・。

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は最後にホールデンとフィービーが会う場面で終わる。その時の会話でホールデンはフィービーにすごく好きなものをあげてみろと言われる。しかし、ホールデンの頭に浮かんだものは日曜日に会った二人の尼さんとイジメにあって教室の窓から身投げして死んだ生徒のことだけだった。

サリンジャーの描いたホールデンは世界の外側にしか居場所のない病んだ若者だった。

NHKの番組で、1980年にジョンレノンを暗殺したマーク・デイヴィッド・チャップマン、翌1981年レーガン大統領の暗殺未遂事件のジョン・ヒンクリーのふたりが「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を耽読者であった事実を紹介していた。二人とも期せずして25歳の若者だった。また、ベトナム戦争からの帰還兵が「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を「戦場では私のバイブルだった」と述懐していた。

テレビ番組を観た時はへー、ぐらいにしか感じなかったが、今、読み終えてわかったことがある。

(つづく)








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